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JDN トップページ > School@JDN > 桑沢デザイン研究所 所長 内田繁 インタビュー


内田繁インタビュー デザインは何のためにあるのか



── 内田繁が、桑沢デザイン研究所の所長(学校長)に就任したのは2008年。所長として、またひとりのデザイナーとして、後進の若者たちにどう接し、教育してきたか。そして今後への課題とはなにか。3年目の節目を迎えた現在の考えを聞いた。

 「これまでも常に重要視してきた‘デザインは何のためにあるのか’を考えようという姿勢は、全く変わっていません。私は『デザインは人間のためにある、人間の幸せのためにある』と言ってきました。
 まず、世界中の人々は地域や民族によって違いがあり、たとえ、異なっていてもそれぞれに真実がある(真実が違う)ことを理解していなくてはなりません。そこで最初に大切なことは‘人間とは何なのか’を考えることです。
 そして次に重要な問題は、デザインが人間の幸せのためにあると言うならば‘幸せとは何か’を考えることでしょう」

── 「デザインするには人間を知らなくてはならない」と説く内田。実際の授業でも直接、学生に向けて「人間とは」「幸せとは」というテーマを投げかけてきたという。

 「所長としては本来ならば授業をおこなう必要はないのですが、私は1年生を対象にした『日本近代デザイン史』と、2年生を対象にした『日本デザイン文化論』を担当しています。各学年200名ほどいるので、ほぼ桑沢の全学生に向けて話をすることができている計算ですね。その時間ではできるだけ学生と会話するようにしてきました。‘人間とは何か’‘幸せとは何か’ということについて、学生それぞれの独自の価値観を語ってもらう機会をつくるようにしています。
 学生たちに話を聞くと、幸せの感じ方だけでも千差万別。そこで互いの価値観にふれ、幸せには多様性があるのだと理解することに意義があるのです。多様性を受け入れ、自分なりに考えるのがデザインなんだと教えたいのです。色や形を美しく整えることだけがデザインではありません。それは、かつて桑澤洋子先生が広義に考えていらっしゃったデザイン観と同じだと考えています」

── 所長就任後の取り組みの一つとして、できる限り学生と接したいと考え、相談や質問がある学生に対し、所長室を解放する日「オフィスアワー」を設けている。内田に限らぬ全教員が対象で、所長である内田のオフィスアワーは前期後期では異なるが、毎週土曜日の昼1時間程度の時間。どんな些細な疑問や悩みにも耳を傾けてきたのは、内田自身が今、学生がおかれている状況を把握し、学生を知ることが必要だと実感していたからだ。


内田繁 プロフィール
1943年日本/横浜生まれ。
桑沢デザイン研究所所長。
毎日デザイン賞、商環境デザイン賞、芸術選奨文部大臣賞等受賞。2007年紫綬褒章受章。
日本を代表するデザイナーとして商・住空間のデザインにとどまらず、家具、工業デザインから地域開発に至る幅広い活動を国内外で展開。
著書に「住まいのインテリア(新潮社)」「インテリアと日本人(晶文社)」「デザインスケープ(工作舎)」「普通のデザイン(工作舎)」他。

内田デザイン研究所
http://www.uchida-design.jp/

桑沢デザイン研究所
http://www.kds.ac.jp/ad.html

 「教育というのは、頭から頭ではなく、人から人へと伝えるものです。所長就任当初から、人を知り、ものごとを知ることがまず大切だと話してきましたが、まさに知ることから始めたに過ぎません。
 とはいえ、就任からの3年間は、学生を観察していた時期だったといえるでしょう。若者たちをどこへ導こうか、観察し、考えながら接してきました。故に、1〜3年生まですべて授業を担当してきた訳ですね。

 桑沢の学生は、ひとつのテーマを与えると深く考える傾向が強いと感じています。他の先生方が造形技術や精度を高める手法を教えていらっしゃるので、私はデザインの考え方を伝えようと、なるべく思想的な課題を多く与え、レポートを提出させています。特にレポートからは、人と違うことを考えようとする姿が見えてきました。それがいいことか悪いことかはわかりませんけれど。

 同時に、学生を育てるのは非常に時間のかかることだと実感しています。大学の4年間、桑沢の3年間で一人前にしようなどとは到底無理がある。おそらく卒業してから数年たち、やっと自らが気づくこともたくさんあるでしょう。桑沢在学中は、その時に柔軟に受け止められるような視野を広げてほしいと思っています。
 デザインの表層だけを狭義に考えるのではなく、哲学、社会、政治、経済すべての関わりがあってデザインが成り立っていることをわかってほしいと望んでいます。<人間・社会・自然>を結びつけ、社会に実際性を与えていく役割を担うデザインは、社会をつくる重要な立場にあることを認識してほしい。当然ながら、絵を描く基礎的技術がなければ表現につなげられないのだから、技術の基礎があって、思考を重ねることが必要です。
 何かものをつくるということは、結果的に様々な世界に触れていくことにほかなりません。その事実を学生にも早く気づいてほしいと思っています」

── ものの見方と技術を身につけていくのが、桑沢での時間となる。人間や環境を観察し、熟考を重ねる基礎を学ばせる教育方針は、今後も継続するという。
同時に、内田がかねてより示してきた教育原点<守破離>もまた、デザイナーの根底にあるべき姿を象徴し、ひとつの指針となっていくようだ。最後に、若手デザイナーとして期待をかける言葉を残してくれた。

 「学生はまず『守』、つまりひたすら学ぶことです。‘学ぶ’という言葉は、‘真似ぶ’に語源をもちます。まずは徹底的に真似ることで、本質を理解することができるでしょう。日本の大学では、‘真似ぶ’をやらないまますぐに、オリジナリティーを求めようとしますが、独創性はそんなにすぐに表れるものではありません。真似て、学んでいくことでやっと生まれるもの。『守』の部分をおろそかにしてはいけないのです。若い時代は特に、繰り返し学ぶことで必ずデザイナーとしての体力が養われる時期なのですから」

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桑沢デザイン研究所 所長であり、デザイナーでもある内田繁

桑沢デザイン研究所 所長であり、デザイナーでもある内田繁


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