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広島市立大学

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所在地
〒731-3194
広島県広島市安佐南区大塚東3-4-1

読みもの

インタビュー
広島市立大学

ただ 『つくる』 ことが好きだった少女が、自分だけの強みを見つけてデザイナーになるまで(後編)

「デザインに興味はあるけど、どんな進学先があるんだろう?」「美大を卒業した後の就職先って?」漠然と将来に不安を感じることってありますよね。そこで「デザインノトビラ」では美大・デザイン系学校を卒業した若手クリエイターを取材。クリエイターの体験談を通して、皆さんの進学先の先にある仕事を考えるためのヒントを探ります!前編では、2022年から自動車メーカーのマツダ株式会社でデザイナーとして働く富田菜月さんに、進学の道のりや大学で学んだことについて伺いました。今回の後編では、マツダに就職するまでの経緯や、大学で学んだことをどのように仕事に生かしているか語っていただきました波乱の就職活動の中、本当に自分のやりたいことが見えた――サークルも学業も充実した学生生活を送っていたとのことですが、就職活動はいかがでしたか?なかなか波乱の道のりでした……。大学3年でドイツに留学する予定だったのですが、コロナ禍によって断念。それなら大学院に進学してから留学に再チャレンジしよう。そう思ったのですが、「本当にそれでいいのかな?」と思い始めてしまって。富田 菜月さん 2022年、広島市立大学デザイン工芸学科立体造形専攻を卒業。同年、マツダ株式会社に新卒入社。現在デザイン本部ブランドスタイル統括部にて活躍中。大学時代は軽音楽部に所属し、現在もギターとベースをたしなむ。 ――それはどうしてですか?コロナによってなかなか学生生活を満足に送ることができず、目標だったドイツ留学も諦めることになって、大学院進学.......。全部コロナによって自分の将来が左右されているなと感じたんです。それが悔しくて、「なにくそ!」という気持ちが沸々と湧いてきて(笑)。それで自分の力で進路を切り拓こうと、4年生のタイミングで就活することを決心しました。――職種はやはり、デザイン系を志望していたんでしょうか。そうですね。デザイン系を中心に見ていたのですが、4年生の時期だとデザイン系職種って新卒採用を締め切っている会社がほとんどなんですよね。やっとの思いで募集を見つけても中途のみの採用だったりして、途方に暮れました。大学4年生の頃、ゼミでの地域課題解決を目指したプロジェクトに取り組む富田さん(左)。仲間と制作に全力で取り組みつつも、将来には迷いを持っていた。 ――そうなんですね……。それからどうされたのですか?改めて自分が本当にやりたいことについて考えてみたんです。今の私に一番必要なこと。それは、造形美だけでなく機能美も意識したデザインをできるようになること。実はドイツに留学したかったのも、車や文房具などプロダクトが強い国で機能美について学びたかったからなんです。大学では造形の美しさのほうにこだわりを持って創作したからこそ、次は機能的で洗練されたデザインスキルも身につけたい。そんな思いがあって、機能美について学べる会社を探そうと思いました。――そこで思い浮かんだのが、地元・広島のマツダだったんですね。はい。実は立体造形専攻には広島市立大学とマツダの「共創ゼミ」があって、私はそのゼミ生でした。週に1回マツダのトップデザイナーにプロダクトデザインの講義に来ていただいて、一緒に課題を進めていく。そんな活動を通して、造形美だけでなく機能も考慮したデザインの重要性について学びました。だからこそ、就職して機能美について学ぶならマツダしかないと思いましたね。株式会社マツダは広島県広島市に本拠地を置く自動車メーカーで、2020年に創立100年を迎えた。「魂を吹き込む。命を与える。思想を実現する。」という哲学のもと、カーデザインをしている。 ――ということは、車のデザイナーを志望されたのですか?最初はそのつもりでした。しかし、私のポートフォリオを見たマツダの方から「富田さんはストーリーを考えてものを作るのが得意だから、車に関わるデザインよりもブランディングのほうが合っているんじゃない?」と言っていただいて。そこでマツダには「ブランドスタイル統括部」というブランドの魅力や価値を外部に発信する部署があることを知りました。自分の強みを活かしながら、マツダが長年培ってきた機能的なデザインに関するノウハウも学べる。こんなに最高な環境はないと思いましたね。何度も選考プレゼンを行い、心が折れそうになった時もありましたが、無事内定をいただけて心の底からホッとしました。大学で培った“伝える”力で、多くの人にブランドの魅力を発信――現在マツダのデザイン本部ブランドスタイル統括部にお勤めとのことですが、改めてお仕事内容について教えてください。ブランドスタイル統括部は、あらゆるお客様とのタッチポイントの姿をデザインしてブランド価値を伝える部署。店舗やWEB、映像、またグッズの制作によって、マツダというブランドの魅力や価値を人々に伝えていくのが私たちの仕事です。地元の老舗和菓子店とコラボした「にしき堂×MAZDA 特製饅頭&もみじ詰合せ」。饅頭のパッケージはマツダ車を彷彿とさせる赤、焼印にはロードスターをはじめとしたマツダの歴代名車があしらわれている。また、広島の名所をカードにデザインして同梱。富田さんはカード、シール、焼印のデザインを担当した。  ――大学で学んだことが仕事に活かされていると感じる瞬間はありますか?大学時代は作品そのもののクオリティだけでなく、その作品が見る人にどのように伝わるのかまで考えながら制作していました。照明の当て方、プレゼン資料の作り方、発表での語り方……あらゆる方法を使って「伝わる形」を模索する。その経験がマツダの魅力を最適な形で伝える今の仕事にものすごく生きているなと感じています。マツダというブランドに共感してもらえるようなストーリーを、いろんな施策を通して発信していきたいですね。自分の強みを伸ばしつつ、周りの先輩方から吸収できることはとことん吸収しながらデザイナーとしてのスキルを磨いていけたらと思います!――最後に、デザイン系の学校への進学を検討している方々にメッセージをお願いします!「ここ面白そうかも!」と少しでも思ったら、話を聞きにいったり調べてみてください!デザイン系の大学も職業も、わかりやすく道が拓かれていないことが多いです。だからこそ、自らアクションを起こして情報をつかみにいくことが大事になってきます。自分の直感に正直に、興味が出たら迷わず突き進んでほしいと思います!美大・デザイン系学校で楽しむには、まず自らアクション!(広島市立大学 ライブの様子) 執筆:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 取材・編集:猪瀬香織(JDN)
2023年4月27日(木)
インタビュー
広島市立大学

ただ 『つくる』 ことが好きだった少女が、自分だけの強みを見つけてデザイナーになるまで(前編)

「デザインに興味はあるけど、どんな進学先があるんだろう?」「美大を卒業した後の就職先って?」あまり情報がなく、漠然と将来に不安を感じることってありますよね。そこで「デザインノトビラ」では美大・デザイン系学校を卒業した若手クリエイターを取材。クリエイターの体験談を通して、皆さんの進学先の先にある仕事を考えるためのヒントを探ります!2回に分けてお届けする本記事の前編では、2022年から自動車メーカーのマツダ株式会社でデザイナーとして働きはじめた富田菜月さんに、幼少期から美術系大学進学までの道のり、充実した大学生活について伺いました!一番やりたいことを考えたら、やっぱり『つくる』ことだった――美術系の学科に進学し、現在マツダに勤められている富田さんですが、小さい頃はどんなお子さんでしたか?小さい頃から絵を描いたり粘土で遊んだり、とにかく何かを作ることが大好きな子どもでしたね。どちらかというと立体を作ることのほうが得意だったと思います。富田 菜月さん 2022年、広島市立大学デザイン工芸学科立体造形専攻を卒業。同年、マツダ株式会社に新卒入社し現在はデザイン本部ブランドスタイル統括部にて活躍中。大学時代は軽音楽部に所属し、現在もギターとベースをたしなむ。 ――やはり昔からものづくりが好きなお子さんだったんですね。高校生の時も美術への関心は高かったんですか?昔から絵を描くことが好きだったものの、特にその道を極めようとは思ってなかったんです。なので高校も美術系の学科があるところではなく、普通科の高校に進学しました。美術部にも入らず帰宅部として漠然と高校生活を送っていると、気づいたら高2の夏になってしまって……(笑)。――高2……そろそろ進路について考え始める時期ですよね。そうなんです。当時の担任の先生にも「何かしたいことはないの?」と聞かれ、もう進路を考え始めないといけないんだとハッとしました。そこで改めて「自分のやりたいことって何だろう?」と考えてみると、最初に浮かんだのがデザインだったんです。それから本格的にデザイン系の大学を目指そうと、美術部や画塾に入って入試対策を始めました。小さい頃からものづくりが好きだった富田さん。大学、就職とデザインの道を進むことになる。(写真は大学入学後、専攻を選ぶための体験課題で陶器のコップを作る富田さんと同級生) ――進学先に広島市立大学のデザイン工芸学科を選んだ理由は何だったのですか?県内でデザイン系の大学を探していた時に、先生に紹介してもらったのが広島市立大学を知ったきっかけです。一度どんな大学なのか見てみようと文化祭に行ったら、本当に楽しくて……!特に軽音楽部のライブがすごい盛り上がりで、キラキラした表情で舞台に立つ先輩たちを見て、一気に心をつかまれちゃいました。また、展示されていたデザイン工芸学科の卒業制作もクオリティが高く、高校生ながら圧倒されたのを覚えています。この大学なら学業もサークル活動も、充実した学生生活が送れると感じたことが一番の決め手でしたね。自由な発想で創作活動に励んだ大学生活――受験を経て憧れの大学に入学した富田さんですが、4年間通ってみていかがでしたか?軽音楽部と学業、どちらも全力でやり抜いた4年間でした。軽音楽部では5つくらいバンドをかけもちしながら、毎日スタジオで練習してました(笑)。――5つもですか!学業に支障はなかったですか?高校とは違って課題を提出するまでの時間の使い方は本人の自由なので、うまく時間を調整して学業と部活動を両立できるようにがんばりました。軽音楽部とはいえ、楽器の練習だけでなく、グッズやTシャツのデザインなど、ものづくりにもこだわって活動していました。文化祭で見たライブに憧れた富田さんは、入学後に自身も軽音部で大活躍。 ――授業ではデザインの基礎を学びつつ、サークルでは創造性を発揮しながら創作する。ものづくりが好きな人にはもってこいの環境だったんですね。そうですね。授業でいうと、広島市立大学のデザイン工芸学科は出される課題が特徴的で、学生の想像力に委ねるテーマがとても多いんです。例えば『魔法の灯』というテーマでプロダクト課題が出されたこともありました。――すごく抽象的なテーマですね……。抽象的だからこそ、自由に発想できることに楽しさを感じていました。テーマに沿ってストーリーを考えながら、素材やデザインに意味を持たせることでプロダクトの世界観を一から作り上げる。そんな力を養うことができたと思います。実は、立体造形を専攻したのも、幅広く発想しながらものづくりをしたかったからなんです。卒業制作で取り組んだ竹素材の照明。さまざまな素材の中からプロダクトのストーリーに最適なものを選べることは、立体造形専攻の魅力の一つだという。 ――そうなんですね。立体造形はどのような専攻なのでしょうか?基本的に工芸は、金属や染織のようにあらかじめ素材が決められていることが多い分野です。だけど、私はそこに違和感があって。テーマや目的によって最適な素材は変わるはず。それなのに素材が限定されてしまうのはどうなのだろう?って。もちろん、一つの素材でものづくりを極めることは素晴らしいと思います。そんな人を尊敬しています。でも、私は素材選びも含めてストーリーを考えたかったんです。その点、立体造形は立体であればなんでもOK。私がやりたいものづくりのスタイルにぴったりな専攻だと思いました。絵本制作の課題に取り組んだときの様子 大学祭のカフェで配布するフライヤー用の写真を撮影。グループ課題として取り組んだカフェの企画運営で、建築からメニュー料理まで全てをプロデュース。富田さんはヴィジュアル面を担当した。 ――選択肢の幅が広い分、どの素材が最適か選ぶのも難しいのではないですか?確かにおっしゃる通りです。なので、選択に迷った時はデザイン工芸学科の他の専攻の友人にアドバイスをもらうようにしています。違う専攻同士の距離感が近いところがこの学科の魅力の一つ。金属造形や染織造形、漆造形など一つの素材を極めた人たちの脳みそを借りながら、最適な素材を選んでいきます。また、途中で専攻を変えることができるのも、この学科ならではの特徴かもしれません。デザインには興味あるけど、何から始めてみればいいかわからない。そんな人も自分のやりたいことを見つけやすい学科だと思います。執筆:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 取材・編集:猪瀬香織(JDN)
2023年4月21日(金)

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