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コラム

【学園祭2024】美大・デザイン系学校の学園祭へ行こう! 見どころを紹介

美大・デザイン系の学校の学園祭日程は、デザインノトビラ「イベントをさがす」ページから検索できます。ぜひ活用してみてくださいね!一般的な大学とは一味違う?美大・デザイン系学校の学園祭 写真提供:武蔵野美術大学 写真提供:武蔵野美術大学  学校生活の雰囲気や楽しさに触れることができる学園祭。オープンキャンパスとはまた異なる視点で学校を知ることができます。中でも、ものづくりにおいては一味違うのが美大・デザイン系学校の学園祭です。絵画、彫刻、工芸、建築、デザイン……さまざまな領域でものづくりを学ぶ学生が協力してつくりあげるため、構内を彩る装飾やポスターなどの制作物には気合の入ったものが多く見られます。また、作品展示や作品・手作りグッズの販売がおこなわれるのも特徴のひとつ。本記事では、そんな美大・デザイン系の学校でおこなわれる学園祭の魅力を、写真とともに紹介していきます!※具体的なプログラムの内容については各大学の情報を参照ください。学園祭の検索は「 イベントをさがす」ページへ学園祭のここが見どころ!3選■その1 目にも楽しい模擬店に注目学園祭と聞いて、まずは模擬店を思い浮かべるという人も多いのでは?のぼりや看板、着ぐるみなどでお客さんを呼び込むのは定番の風景ですが、美大・デザイン系の学校のなかには凝った外観で人を集めるお店があります。アイデアもそうですが、実際にかたちにできてしまうところは、さすが普段からものづくりに励む学生たち。メニュー表のグラフィックやお店・商品のネーミングにいたるまで創意工夫が見られたりするので、ぜひ細かい部分も注目してみてください!写真提供:多摩美術大学 写真提供:多摩美術大学 ■その2 作家・アーティストの卵の作品も?フリーマーケットがアツい!手づくりのキーホルダーや小物、アクセサリー、イラストや写真のポストカード、Tシャツ、陶芸品……学生によるさまざまな手づくり品が販売されるフリーマーケットは美術・デザイン系の大学・学校ならでは。学生の手づくり品だからといって侮ることなかれ。中には既製品に負けない、かなり本格的なつくりのものもあります。普段行くようなお店では手に入らない、ここだけの一点ものに出会えるかもしれません!写真提供:東京造形大学 写真提供:東京造形大学 写真提供:多摩美術大学 写真提供:多摩美術大学 ■その3 学校全体が美術館!作品展示をじっくり楽しむ学科やコース、研究室、有志グループなどが企画し、普段の創作活動を発表する作品展示。学業の集大成として4年次におこなわれる卒業制作展とは異なり、さまざまな学年の作品を通して日頃の学びの様子を垣間見ることができます。また、開設されている学科やコースによりますが、絵画、彫刻、デザイン、工芸などの作品展示のほか、舞台の上演やアニメーションの上映、ファッションショー、ダンスパフォーマンスなどがおこなわれる大学・学校も。学科やコース選びに迷っているという人は、学園祭でさまざまなジャンルの表現に楽しみながら触れてみるのがおすすめです。写真提供:武蔵野美術大学 写真提供:東京造形大学 写真提供:東京造形大学 写真提供:多摩美術大学 夏のオープンキャンパスを逃した人は特に注目!進学コーナー高校生も多く集まる学園祭。受験生向けに進学相談コーナーや説明会、資料配布、入試参考作品の展示などをおこなう大学・学校もあります。オープンキャンパスに行きそびれてしまったという人は、この機会にチェックしておきましょう。また、学園祭は在学生との交流のチャンスでもあります。もし進学コーナーがなかった場合でも、会場の在学生に勇気を出して声をかけてみましょう。受験に役立つ、生の情報を得られるかもしれませんよ。写真提供:多摩美術大学 写真提供:多摩美術大学 学園祭の開催情報を調べよう!写真提供:武蔵野美術大学 学生たちによる、ものづくりへの熱意やこだわりを存分に感じられるのは美大・デザイン系学校の学園祭ならでは。また、進学を考える人にとっても、大学の色を知ることができる貴重な機会です。デザインノトビラでは、そんな学園祭を簡単に検索できます。「イベントをさがす」ページの「イベント種別」で学園祭を選択して、ぜひ探してみてくださいね。※本記事の掲載写真は2022年度以前に開催された学園祭で撮影されたものです
2024年8月21日(水)
インタビュー

【後編】美術予備校ってどんな場所?現役美大生に聞いてみた!

美術大学やデザイン・クリエイティブ系の学校への進学を検討しているみなさんが、一度は耳にするであろう「美術予備校」。一方で、美術を初めて専門的に学ぶという人には、実際どんな場所なのか、何を学べる場所なのか、わからないことも多いのではないでしょうか?今回は、そんな美術予備校で学び、美大合格を掴んだ4人の先輩たちにインタビューを実施。後編の本記事では、東京の御茶の水美術学院で学び、東京藝術大学 建築科に進学したK・Tさん、多摩美術大学 グラフィックデザイン科に進学した渡辺さんが登場。予備校で過ごした日々を振り返ってもらいました!予備校は同じ目標を持った仲間が集まる場所。想像以上にたくさんの発見がある東京藝術大学 美術学部 建築科 在籍K・T さん【受験した科目】一般選抜(実技:空間構成、総合表現 学科:大学入学共通テスト)【予備校に通った期間】高校2年生の夏から1年半「進路を考えはじめたのは高校に入ってから。その後、東京藝術大学を受験することを決めたタイミングで、美術予備校を探し始めました」Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?まず、短期間で予備校の様子を知ることができる春季講習をいくつかの予備校で受講しました。そのなかで、自分の制作スタイルに合うところを探しました。 選ぶ際に重視したのは、通いやすさや授業の雰囲気です。Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 通っていたコースは、建築科の土日コースでした。基礎課題から過去問まで、受験の内容に関わらずさまざまな課題に取り組み、課題に対する自分なりの一貫した考えを表現することを学びました。特に入試直前の期間は、限られた試験時間のなかで自分が提案する案を他の人にどれだけわかりやすく、説得力をもって伝えられるかを考えていましたね。「向き合う空間」をつくるという課題でK・Tさんが制作した作品。いくつかのボリュームとそこに入り込むひとつながりの平面を、「湖」の環境のなかに配置した Q.美術予備校に通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?予備校は同じ目標を持った仲間がたくさん集まる場所で、互いに意見を伝え合ったり教えてもらったりするなど、想像以上にたくさんの発見があります。実際に建築科では休み時間のたびに他の人の提案を聞いたり、自分の考えていることを聞いてもらったりして、講評会までの間にどんどん案をブラッシュアップしていくことができました。また、予備校に通ういちばんのメリットは現役で大学に通っている先輩方が講師を務めていることだと思います。大学での様子を聞いたり、悩みの相談をしたり、受験生時代にどのような対策をしていたのかを聞くこともできます。時々、講師の方が入試のデモンストレーションをしてくださったのも予備校に通っているからこそのことで、私にとってはとても良い経験でした。美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!予備校に通い始めると、一緒に頑張ることのできるたくさんの仲間がいて、刺激をたくさん受けると思います。その中で他の人と比べて自分の作品が劣ってるように見えたとしても、自分にしかできない表現ができていたら、自信を持って制作を進めていってほしいです。その独自の表現を見つけ出すのが苦しい時もきっとあると思います。そういう時はあまり考え込みすぎず、好きなことをする時間をとって、いいバランスで受験期間を過ごしてほしいと思います。無自覚だった自分の長所に気付いてくれたのは、予備校の先生だった多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科 在籍渡辺蓮 さん【受験した科目】一般方式(実技:鉛筆デッサン、色彩構成 学科:大学独自試験)共通テスト1方式(鉛筆デッサン、色彩構成 学科:大学入学共通テスト)【予備校に通った期間】高校卒業後の春~1年間「昔からデザイン、美術に興味があり、高校在学中から美大を目指すことを視野に入れていました。でも、自分の実力で目指しても大丈夫なのだろうか、もし入れたとしても将来美術系の仕事に就けるのだろうかという不安がありました」Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?私が予備校に通い始めたのは高校を卒業してからです。将来への不安などもあり現役では美大を受験せず、浪人して予備校に通い、美大を目指しました。予備校選びについては、進学実績を見てお茶の水美術学院を選びました。本当はさまざまな予備校の体験授業を受けて学校の雰囲気を見た方が良かったかもしれませんが……。今ではお茶美を選んで本当に良かったと思っています。Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 私大デザイン平面系コースの昼間部に通っていました。同コースには、入試で出題されるデッサン、色彩構成を中心に、立体造形、ロゴデザインなどの授業もあります。とにかく多くの作品を制作し、自分の美意識や思考の傾向を分析していくことで、自分の力を最大限発揮する術を学びました。特に自分の実力が伸びたと感じたのは夏期講習です。お茶美の夏期講習には、ほかの予備校や藝大コースから来た人を含めて多くの実力ある受験生が集まっていました。その中で自分の絵を並べ、客観視できたことで、周囲との差のつけ方、訴求力の高め方などを整理できたように思います。また、私が未経験から1年で美大に合格できたのは、お茶美の先生方が長所を発見してくれたことも大きいと感じています。当初は自分の文字に対する嗅覚や、モチーフを細部まで観察する力に無自覚でした。先生方がそこを褒めてくださったおかげで、その力を活かせる構成で本番も戦えたように思います。 Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?美術予備校の受講に向いているのは、5時間、10時間でも1枚の絵と向き合い続けられる人だと思います。絵を描いている時は常に思考を目の前の絵に注ぐ必要があるため、かなり大変です。もし、1度でも長時間集中して作品を描きあげた経験があるのなら、自信を持って美術予備校を受講するべきだと思います。ただ、予備校に通わず家や高校で長時間続けて制作をするには、特殊な環境が必要です。独学では、長時間絵と向き合う能力があるのか確信を持つことは難しいと思います。少しでも美術に興味がある方は、予備校で、誰にも邪魔されない環境で絵を描いてみてください。そこで自分にその力があるのか試してみるといいのではないでしょうか。美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!制作には、描き出しから完成まで考え続ける体力が必要なので、健康が何より大切です。たくさん食べて、たくさん寝て、たくさん予備校に行ってください。それから、他人の講評をよく聞くこと、本を読むことも役に立つと思います。他人の講評を聞くことは、自分の美意識の分析に役立ちます。自分がいいなと思った絵に対して、あの先生はどうコメントするのだろうかとか、この絵は先生からは褒められているけど自分はここが気に入らないといったことなど、自分が気にしているところ、あまり気にしていなかったところがよく分かります。また、自分にとって想像できる世界が広ければ広いほど美術で表現したいことも増えて楽しくなるはず。本を読むことで、読解力と想像力を補強できると思うので、習慣的に読んでみるといいのではないでしょうか。取材協力・御茶の水美術学院東京・御茶の水で60年以上続く芸大・美大受験予備校。小学生~高卒生の生徒や社会人経験のある方が、基礎から受験対策まで、個々のレベルに合った指導を受けることができる。2024年は東京藝術大学 デザイン科の合格者数が全国1位となり、18年連続1位を達成。デザイン系学科の高い進学実績を誇る。■御茶の水美術学院公式サイト https://gakuin.ochabi.ac.jp/
2024年8月21日(水)
インタビュー

【前編】美術予備校ってどんな場所?現役美大生に聞いてみた!

美術大学やデザイン・クリエイティブ系の学校への進学を検討しているみなさんが、一度は耳にするであろう「美術予備校」。一方で、美術を初めて専門的に学ぶという人には、実際どんな場所なのか、何を学べる場所なのか、わからないことも多いのではないでしょうか?今回は、そんな美術予備校で学び、美大合格を掴んだ4人の先輩たちにインタビューを実施。前編の本記事では、東京の御茶の水美術学院で学び、東京藝術大学 デザイン科に進学した稲葉さん、同大学 工芸科に進学した阪尾さんが登場。予備校で過ごした日々を振り返ってもらいました!自分を客観視することで、自分と違う人の良いところを吸収して成長できた 東京藝術大学 美術学部 デザイン科 在籍稲葉このみさん【受験した科目】一般選抜(実技:鉛筆写生、色彩、形体 学科:大学入学共通テスト)【予備校に通った期間】高校1年生の4月〜高校卒業まで「幼い頃から、絵を描いたり、ものをつくることに夢中でした。自分が考えたアイデアが形になっていくことへの楽しさを覚えた頃には、頭の中がデザインのことでいっぱいでした」Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?中学生の時に、ホームページやパンフレットなどで調べたり、両親と相談したりして選びました。なかでも御茶の水美術学院の講習内容や生徒の作品がすばらしく、無料体験に行ってみようと決めたのが中学2年生の春です。体験ではデッサンの楽しさを知り、初めて多くの人たちと一緒の環境で描くことがとても刺激的でした。その後、その年の夏期講習、冬期講習を受講し、高校生になってからは1年生の春から高校卒業までの3年間通いました。予備校を選ぶ際は、生徒のみなさんが描いた作品のレベルの高さと、予備校の雰囲気が自分の性格にあっているかを重視していたと思います。Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 高校1年生の頃は週2回のコース、2年生は週5回のハイレベルコース、3年生で夜間の藝大デザインコースに通いました。藝大受験を本格的に考え始めたのは高校1年生の時。3年生になると東京藝大1校に絞り、デザイン科の対策に集中し、力を入れて取り組みました。どんな授業内容でも柔軟に、かつ自分らしく課題にこたえられるように意識していましたね。デッサン、色彩、立体などすべてにおいて、まずは自分が納得できるものを目指して制作していました。稲葉さんが取り組んだ、東京藝術大学 美術学部 デザイン科の令和6年度入試課題(色彩構成入試再現)。テーマは、世界に存在しない「あなたの空想する花」 Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?楽しむことができる人かなって思います。好きなことだからこそ、悩むこともあるけれど、そこで粘り強くやっていける人が向いていると思います。メリットは、講師の方たちから高いレベルのノウハウを学べることと、多くの受験生とお互いに刺激を受けられることです。まわりと並ぶことで今まで以上に自分を客観視することができました。自分を客観視することで、自分と違う人の良いところを吸収して成長できたと思っています。美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!自分が美しいなとか、素敵だな、かっこいいな、と思うその感性を大切にしてほしいです。きっとその感性は何かを制作する時のエネルギー源やアイデアの引き出しになってくれるんじゃないかな、と思います。自分が楽しんでつくっていると、見てる人にも伝わるというのは、受験時代に何度も経験して感じました。だから楽しむことを忘れないでほしいです。辛くなってしまう時は、どうしたら自分を楽しい時の状態に持っていけるか、といった自己分析ができると、自分の強い武器になってくれると思います。予備校は入試本番までの練習。挑戦することに躊躇せず過ごした 東京藝術大学 美術学部 工芸科 陶芸専攻 在籍阪尾瑞穂さん【受験した科目】一般選抜(実技:鉛筆写生、平面表現、立体表現 学科:大学入学共通テスト)【予備校に通った期間】2021年12月~2023年3月「2021年夏、陶芸を学びたいと思い立ち、東京藝大の工芸科を目標に定めました。当時は社会人として働きながら、時間を見つけて『ochabi art gym』という初心者向けのプログラムでデッサンを経験しました」Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?美術系大学に入学するには美術予備校に通う必要があるというのは聞いたことがあったので、インターネットで調べて予備校入学までの計画を立て、冬期講習から通い始めました。予備校選びは、直観です!……が、振り返ってみると参考作品の印象が良かったのが第一の理由だと思います。素直に「きれいだな」と感じ、この予備校で学ぶことができればきっと自身もその方向に進むことができるのだろうと期待していました。また、予備校のWebサイトが見やすいのも好印象でした。美術、デザイン系を学ぶにあたって、学校全体の高い意識が感じられたのが良かったです。入学後もそのカンは外れてなかったように感じました。Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 工芸科の昼のコースで学びました。美大受験においての表現というものが初めてで、その基準を理解するまで試行錯誤しましたが、先生方から多角的なアドバイスをいただき無事落とし込めるようになりました。デッサンが弱かったのでそこに力を入れつつも、メンタルや疲労が制作に影響すると感じていたので、適度に休みながら、嫌いにならないよう取り組みました。全体を通して「モノの見方」「表現するうえでの考え方」を予備校で鍛えることができ、受験後もその感覚は常に役立っています。阪尾さんの平面表現、立体表現作品。こうしたイメージ課題は自分の得意な表現へと寄せることができるため、楽しく、得意だったそう Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?失敗を恐れない人。失敗から学べる人。失敗を失敗で終わらせず前向きに受け取り、食らいついていけると強いと思います。予備校は入試本番までの練習なので、挑戦することに躊躇せず過ごしていました。予備校に通っていて良かったことは、「同じ課題に対して同じ作品を作る人が一人もいない」という表現そのものの無限の可能性を感じられたことです。毎日がとても刺激的でした。また、予備校期間の課題への取り組みや、他の生徒との比較の中で、自分自身のもつ強みや弱みを知ることができ、とても有意義な修業期間でした。特に私が通った御茶の水美術学院は受験の型にはめようとせず、それぞれの生徒の個性を大事に伸ばしてくれたので本当に良かったです。美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!受験作品の制作に限らず、展示や自然、日常にあるデザインなど、たくさん見て感じる時間も大事です。自分自身が表現したものを毎日比較や評価されるというのは辛さもありますが、ここでの評価が「美術」自体の正解というわけではないと思うので、たまには課題からズレても「楽しい!」を求めて制作するなど、根を詰めすぎず取り組んでみてください。社会人からの美術受験も発見が多く、有意義でおすすめです。想像以上に体力が必要でした!受験期のアレコレを漫画にまとめていますので、興味があればぜひこちらも覗いてみてください。取材協力・御茶の水美術学院東京・御茶の水で60年以上続く芸大・美大受験予備校。小学生~高卒生の生徒や社会人経験のある方が、基礎から受験対策まで、個々のレベルに合った指導を受けることができる。2024年は東京藝術大学 デザイン科の合格者数が全国1位となり、18年連続1位を達成。デザイン系学科の高い進学実績を誇る。■御茶の水美術学院公式サイト https://gakuin.ochabi.ac.jp/
2024年8月9日(金)
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ニュース

学生限定!「長谷工住まいのデザインコンペティション」が開催。高校生の応募歓迎

マンション開発を中心とした大手建設会社・デベロッパーの株式会社長谷工コーポレーションが主催する、「第18回 長谷工住まいのデザインコンペティション」。応募対象は高校生・大学生をはじめとした学生で、「集合住宅の新しいあらわれ」をテーマに、2024年11月5日まで建築プランを募集します。都市を構成する重要な要素である、建築の外観(あらわれ)を改めて問う今回のコンペ。審査員には「Dior Ginza」などで有名な建築家の乾久美子さん、同じく建築家の藤本壮介さん、増田信吾さんなど、第一線で活躍する豪華メンバーが並びます。さらにゲスト審査員として、コミュニティやケアの領域で制作、実践、研究、提案を行う文化活動家・アーティストのアサダワタルさんも参加。審査は、1次のアイデアコンペで選出された上位4組が2次に進み、模型の提出・プレゼンテーションを行う2段階方式。最優秀賞1点には100万円、優秀賞3点には各50万円、佳作10点には各10万円が授与されます。9月30日までに応募登録を行うと、昨年の審査の様子を収めた動画を視聴できる特典も。ぜひ、新しい都市の景観を生み出すような集合住宅の「あらわれ」を提案してみてください。
2024年8月1日(木)

コンテスト型新企画「KNOCK」スタート!企業が高校生の作品を募集

高校生向けコンテスト型の新企画「KNOCK」とは?「絵を描くことが好き」「アイデアを考えることが好き」「ものづくりが好き」というデザイナー・クリエイターの卵のみなさん!クリエイティブを学び、将来を考える人のための情報サイト「デザインノトビラ」は、そんなみなさんから作品・アイデアを大募集する新企画、「KNOCK」をスタートします。「KNOCK」では今後さまざま企業が不定期にテーマを出題。高校生のみなさんだからこそ生み出せる、フレッシュで自由なアイデアや作品を募ります! 将来を考えるきっかけとして、作品発表の場として、まずは「KNOCK」でデザインのトビラを叩いてみませんか?高校生が「KNOCK」に応募すると、いいことが!あなたの作品が社会に出るチャンス!企業・クリエイターに作品を審査してもらえる!素敵な賞金や賞品がもらえる!応募のしかた募集中のテーマ一覧から挑戦したいテーマを選ぼう!締切までに作品をつくろう!作品応募フォームへの投稿で、応募完了!決まった期日まで、ドキドキしながら結果を待とう……!募集中のテーマ(新着順)ただいま募集は行っておりません。新しいテーマの発表をお楽しみに!これまでに募集したテーマデザインノトビラ(株式会社 JDN)「KNOCK」のメイングラフィック募集(8月30日15:00締切)始まったばかりの新企画「KNOCK」のメイングラフィックを大募集!サイト内で注目を集める、すてきなグラフィック作品を募集しました。最優秀賞(1点) Amazonギフトカード3万円分、作品を企画のメインページグラフィックに採用このテーマの募集要項を見る今後も続々と、このページでテーマを出題していきます!
2024年7月16日(火)
ニュース

⼥⼦⾼校⽣が対象!「⼤学で学ぶIT&デザインプログラムIFUTO」が参加者を募集

認定NPO法人キッズドアが、「⼥⼦⾼校⽣対象!⼤学で学ぶIT&デザインプログラムIFUTO」の参加者を6月23日(日)23:00まで募集しています。6月14日にはオンライン説明会も開催。本プログラムは女子高校生を対象に、オリジナルのTシャツをデザイン・作成したり、IT技術を体験したりするもの。今年は東京と仙台の2会場でそれぞれ3コースが開講し、いずれも参加費やランチ時に配られるお弁当代、wifi・PC貸与代金などは無料で、交通費補助もあります。2会場ともに、千葉大学のデザイン研究に特化したセンター「デザイン・リサーチ・インスティテュート」の先生から指導を受けることができ、総合型選抜や推薦入試のエピソードにも活用できます。主催のキッズドアは開催にあたって「もしITやデザイン、マーケティングの力があれば、あなたの可能性はさらに広がる。(中略)将来、これらに関係する職業に就かなくてもいい。IFUTOを通して、あなたに見えてなかった可能性や世の中の仕組みを知り、新しい物事に挑戦することの楽しさを感じてください」と参加を呼びかけています。募集概要対象学生女子高校生※なんらかの理由で高校に通っていない方もご参加OK※会場まで自力で来られる方募集人数デザインコース 東京・東北で各30名プロダクトコース 東京・東北で各20名メタバースコース 東京・東北で各20名※応募者多数の場合は選考により決定実施期間デザインコース2024年7月27日~28日・8月3日~4日(全4日)プロダクトコース東京:2024年7月27日~28日・8月3日~4日・10日~11日(全6日)仙台:2024年7月27日~28日・8月3日~4日・24日~25日(全6日)メタバースコース2024年7月27日~28日・8月3日~4日・10日~11日・24日~25日(全8日)※上記日程以外のイベントも予定実施会場東京会場 千葉大学墨田サテライトキャンパス(東京都墨田区)仙台会場 仙台国際センター/フォレスト仙台/PARM-CITY131(宮城県仙台市)※仙台会場は日程により変動特典期間中パソコンの貸し出しご家庭にインターネット環境が無い方はモバイルwifiを貸し出しプログラムに通う交通費を補助※交通費については東京会場:3,000円まで、仙台会場:宮城県内の方は3,000円まで/宮城県外の方は15,000円まで※プロダクトコース・メタバースコースで出席状況が良く、経済的な理由でご自身のパソコンをお持ちでない方は、プログラム終了後中古PCを進呈応募はIFUTO特設サイトより受付中。
2024年6月12日(水)
コラム

【第二弾】「注目のデザイナー」を多く輩出する学校って? 出身校ランキングを発表!

「JDN」連動企画! コラム「注目のデザイナー」たちの出身校をランキングで紹介デザインに関わる情報を広く発信するサイト「JDN」で、20年以上続くコラム「注目のデザイナー」。デザインディレクターとして活躍する桐山登士樹さんが、毎月、旬のデザイナーをセレクトし、その代表作や直近の作品を紹介しています。これまでに登場したデザイナーは総勢300人(2024年5月時点)。デザイン業界の“いま”を知ることができ、現役のデザイナーたちもチェックしている人気コラムです。今回、デザインノトビラではJDN編集部と協力し、同コラムに登場したデザイナーの方々のうち、2012年以降の皆さん(174人)の出身校をリストアップ。桐山さんが選ぶ「注目のデザイナー」を数多く輩出する学校とは、いったいどこなのでしょうか?第二弾では、「短大・専門学校・その他教育機関」のランキングをご紹介します!短大・専門学校・その他教育機関ランキング、1位は桑沢デザイン研究所順位学校名掲載人数1位桑沢デザイン研究所5人2位女子美術大学短期大学部2人3位大阪デザイナー専門学校(現:大阪デザイナー・アカデミー)文化服装学院上松技術専門校ICSカレッジオブアーツ富山商船高等専門学校(現:富山高等専門学校)※福島県立会津短期大学(現:会津大学短期大学部)※長岡短期大学(現:富山大学)※    富山ガラス造形研究所※1人※富山商船高等専門学校と福島県立会津短期大学、長岡短期大学と富山ガラス造形研究所の出身デザイナーは同一人物短大・専門学校・その他教育機関のうち最も多く注目のデザイナーを輩出したのは、桑沢デザイン研究所でした。同校は大学を含む総合ランキングでも5位にランクインし、前回記事でもご紹介しています。プロダクトデザインの分野でミニマルな造形を追求し続けるインダストリアルデザイナー・渡辺弘明さん(リビングデザイン研究科卒)、そして当時キヤノン株式会社で多くのプロダクトデザインを手がけながら「SABO STUDIO」として独自のデザイン活動を行っていた清水久和さん(インダストリアルデザイン科卒)が登場しました。続く2位は女子美術大学短期大学部。同校からは、現代美術家コラボレーターとして作品制作やマネージメントに携わり、現在は株式会社箔一ブランドディレクター、shokolatt brandingのCEOなどを務める鶴本晶子さん。さらに、デザイン事業をはじめ製品の企画やプロデュースなどをおこなう株式会社SyuRo代表でデザイナー/クリエイティブディレクターの宇南山加子さん(生活デザイン科卒)が登場しています。3位には8校が並びました。まず、長岡短期大学(現:富山大学、金属工芸科)と富山ガラス造形研究所(研究科)からは、国内外で活躍するガラス作家の塚田美登里さん。大阪デザイナー専門学校(現:大阪デザイナー・アカデミー)からは、プロダクトデザインを軸に、幅広くデザインに携わるクリエイティブスタジオ・AZUCHIの橋本崇秀さん(プロダクトデザイン科卒)。橋本さんは同校を卒業後、神戸芸術工科大学のプロダクトデザイン学科も卒業されています。また、富山商船高等専門学校(現:富山高等専門学校、航海科)と福島県立会津短期大学(現:会津大学短期大学部、デザイン科)を卒業された、プロダクトデザイナーの萩野光宣さん。荻野さんは新潟・燕三条の地場産業にて多くのデザイン開発を手がけています。 そして、文化服装学院からは、在学中にクリエイティブスタジオ・EDING:POSTを設立されたデザイナーの加藤智啓さん(アパレルデザイン科卒)、上松技術専門校からは、東京藝術大学を卒業後に同校で木工を学んだ家具デザイナーの横田哲郎さん(木工科卒)。ICSカレッジオブアーツからは、国内外の空間デザインを手がけるインテリアデザインオフィスI IN設立メンバーのひとり、湯山皓さんが登場しました。なお湯山さんは東京学芸大学の教育学部も卒業されています。気になる注目のデザイナーや学校を調べてみよう!今回は、「短大・専門学校・その他教育機関」のランキング1~3位までと、登場した「注目のデザイナー」のみなさんをご紹介しました。出身校については、デザインノトビラの「学校をさがす」ページからも調べることができます。また、ここで紹介しきれなかったデザイナーは他にもたくさんいます。これまでどんなデザイナーが活躍し、学生時代にどんな環境で学んできたのかを知ることは、学校選びのヒントになるはず。ぜひJDNの「注目のデザイナー」もチェックしてみてくださいね!
2024年5月22日(水)
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インタビュー
武蔵野美術大学

代替を超えたバイオ素材の可能性を探る─グッドデザイン・ニューホープ賞最優秀賞(2)

モノづくりのプロセスが伝わるようなプレゼンを工夫――卒業制作での発表時から、具体的にどのような点をブラッシュアップしたのでしょうか。今回の作品ではキノコの菌糸体という「素材の魅力」と、「モノづくりの楽しさ」の2つを伝えたいと思っていました。ただ、後者については卒業制作展で教授から「モノづくりのプロセスがもう少し見えるといい」と指摘をもらっていたのが引っかかっていたんです。そこで、遊びながらバイオ素材の魅力に気づいてもらうといったコンセプトを理解してもらうために、応募に向けたプレゼン資料を工夫したり、制作過程を動画にしたりしました。動画にはある親子に出演していただき、キットが届いてから、菌糸ブロックを砕き、型に入れて栽培、4〜5日後に収穫して最終的に遊ぶところまでの一連の流れを撮影しました。――動画では楽しそうに菌糸ブロックを混ぜたり、匂いを嗅いだりしている子どもの姿が印象的ですね。菌は汚いだろうと思うのも大人の先入観が大きくて、子どもは砂場で遊んでいるような感覚で純粋に菌糸ブロックに触れてくれるのだと知ることができましたね。キットに入っている菌糸ブロックの袋を開けると森の香りがしたり、日々育っていく菌糸体を観察したりする楽しさもあって、そうした一連のプロセスが伝わる動画になったと思います。――最優秀賞を受賞して、審査委員やオーディエンスから反響はありましたか?「商品化してほしい」とか「遊んでみたい!」といった声が一番大きくて、とてもうれしかったです。卒業制作展でも同様の声をいただいていたんですけど、商品化に踏み出す勇気はありませんでした。ただ今回は、審査委員の方々にアドバイスをいただいたり、賞をきっかけに出会ったほかの参加者がサポートしてくれたりして、商品化に向けてプロジェクトを進めることができています。賞を受賞したという実績があると、生産や流通において話を進めやすいなとも感じています。 ――受賞した際の率直な感想も教えてください。事前にほかの参加者の方々の素晴らしい作品を見ていたので、私はまさか最優秀賞には選ばれないだろうと思っていたんです。だからすごく驚きましたね。受賞後には、改めて応募した作品について参加者が簡潔にプレゼンをして、審査委員やほかの参加者からアドバイスをいただく「フォローアップ・ゼミ」にも参加しました。ゼミでは、みなさんからの客観的なコメントによって、自分では見えていなかった価値に気づかされた場面も多くありました。特に、コンセプトや制作背景を褒めていただいたのがうれしかったですね。自分の作品に対しての自信や愛着がより一層強くなりました。フォローアップ・ゼミの様子 自分が信じるデザインを追い求めながら、社会に貢献したい――デザイナーとしての今後の展望をお聞かせください。今回受賞させていただいたことによって、自分が信じているデザインは意外と世の中に認められるのかもしれないと希望を見出すことができました。今後は、デザイナーとしての責任をちゃんと持って、より社会に役立つものをつくっていきたいなと思っています。まずは、「MYMORI」を商品化することが直近の目標。それぞれのターゲットがより楽しく体験できるようなかたちを検討しています。その先に、遊びだけでなく、菌糸素材のものづくりを介した教育や地域活性化など、より深い価値につながることを目指したいです。まだはっきりとは決めていないのですが、会社の仕事と両立しながら、社会に貢献するクリエイティブを追い求めたいなと思っています。――最後に、現在応募を考えている方に向けてメッセージをお願いします。ニューホープ賞は、自分の作品をブラッシュアップしたり、客観視したりできるチャンスだと思います。この賞の応募を考えている人の中には、いままでにない斬新なデザインを提案したいと思っている人が多い気がしていて。そうしたデザインには、ひとつの視点からだと見えないこともあると思います。ニューホープ賞は多様な視点から作品を見てもらえる絶好の機会なので、あまり結果を気にすることなくぜひ参加してみてほしいです。■グッドデザイン・ニューホープ賞https://newhope.g-mark.org/■2024年度グッドデザイン・ニューホープ賞セミナー 「審査委員が注目する次世代デザインの条件」開催情報日時:2024年5月21日(火)18:00~19:30場所:京都市立芸術大学 C棟1階 講義室1(C-101)登壇者:井上裕太氏(2023年度ニューホープ賞審査委員|プロジェクトマネージャー・KESIKI INC.パートナー/Whatever ディレクター)、原田祐馬氏(2023年度ニューホープ賞ワークショップ講師|デザイナー | UMA /design farm 代表)概要:2023年度ニューホープ賞審査委員の井上裕太氏と原田祐馬氏が、審査委員の視点から、次世代のデザインに求められる条件や、ニューホープ賞での審査の視点や基準などを語ります。参加申し込み:https://nha2024seminar-kyoto.peatix.com/
2024年5月15日(水)
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インタビュー
武蔵野美術大学

代替を超えたバイオ素材の可能性を探る─グッドデザイン・ニューホープ賞最優秀賞(1)

将来のデザイン分野の発展を担う、新しい世代の活動支援を目的とするグッドデザイン・ニューホープ賞。グッドデザイン賞がプロ・企業の商品やサービスを対象にしているのに対し、大学や専門学校などに在学中の学⽣や卒業・修了直後の新卒社会人によるデザインを対象に実施される。応募カテゴリーは「物のデザイン」「場のデザイン」「情報のデザイン」「仕組みのデザイン」の4つで、テーマは自由。応募者が在学期間中に独自に制作したものであれば、大学や専門学校などのゼミの課題制作や卒業制作、自主研究などの作品を応募することも可能だ。また、受賞後にはデザイナーや建築家によるワークショップへの参加など、独自のプログラムが用意されている。2023年度グッドデザイン・ニューホープ賞の審査委員長はクリエイティブディレクターの齋藤精一さん、副委員長を建築家の永山祐子さんが務めた。応募総数415点の中から78点が受賞、そのうち各カテゴリーの上位2点、合計8点が最終審査に進み、最優秀賞1点が決定した 第2回目となる2023年度の最優秀賞を受賞したのは、武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科卒の項 雅文さんによる「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」。キノコの菌糸体を素材にした子ども向けのおもちゃキットで、バイオ素材が置かれている現状を見直し、他素材の代替品としない未来の在り方を考え、生まれた作品だ。今回、同作品をデザインした項さんに、作品の制作背景やコンペへの取り組み方、受賞後の変化などをうかがった。社会課題を解決する手段を学んだ学生生活――まずは項さんご自身について伺いたいと思います。大学ではどのようなことを学んでいましたか?項 雅文(こう がぶん)武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科を卒業後、新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに就職。現在はデザイン統括部に所属し、デザイナーとして活躍 私は2019年に新設された、武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科の1期生として学びました。社会課題の解決の手法や新しい価値を生み出すための考え方を学ぶような比較的新しいタイプの学科で、アウトプットの方法は絵画やグラフィックデザイン、映像などさまざまでした。美術大学の一般的な学部であれば、まず絵画や映像など専門領域のスキルを身につけて作品をつくる流れだと思います。しかし所属していた学科は、産学共同のプロジェクトなどで実社会における課題を発見し、その解決策について表現方法を含め柔軟に考えるといったスタイルでした。デザインを目的ではなく手段として捉えているのが面白いと思います。――例えばどのような課題に取り組みましたか?学科のキャンパスがある東京・市ヶ谷駅周辺の課題を見つけてくるというお題がありましたね。実際に街を歩いて観察するなかで、地下鉄のコンビニの前でおにぎりを食べるサラリーマンの姿が目に入って。市ヶ谷にはオフィスや学校が多く、春には桜が咲き誇る大きな川が流れていたりもするのに、ゆっくり休んだり昼食をとったりできるスペースがないことに気づきました。これに対して私は、川沿いに人が休めるような公共の場をつくる案を提案しました。授業で制作したプレゼン資料。都心において、自然の力を借りて心を休ませる場「WITH RIVER」を提案 この課題の評価はよかったのですが、ある教授から少し面白さや斬新さが足りないとアドバイスをいただいて。それから、自分にしかつくれないものや社会に新しい価値を生み出せるものはなにか?ということを意識するようになりましたね。――もともと項さんがクリエイティブイノベーション学科に進学しようと思った決め手はなんだったのでしょうか?私は中国の上海出身で、高校卒業とともに日本の大学を志しました。子どものころから美しいものが好きで、インターネットで好きなデザインに触れるうちに、日本のプロダクトデザインが世界的に見ても高いレベルにあることを知ったんです。日本のプロダクトは、特に機能面などでユーザーに配慮されたデザインが多いですよね。高校時代は理系のクラスだったこともあって、大学でも造形的なことだけではなく社会的な課題や科学の領域と接続したデザインを学びたいという思いがありました。その点、クリエイティブイノベーション学科のカリキュラムが私に合っていると思ったんです。ちなみに、私のゼミの先生は物理学の出身です。幅広い領域の課題に取り組むなかでデザインの可能性が広がったと思います。――大学卒業後は株式会社ディー・エヌ・エーのデザイン統括部に就職されています。現在のおもなお仕事内容についても伺えますか?現在はアートディレクショングループという部署に所属し、全社横断的な案件のデザインを担当しています。特に、企業のブランドイメージやコンセプトを目に見える形にビジュアライズするCIやVIに携わっています。作品の価値を確かめるためにニューホープ賞に応募――項さんが今回の「グッドデザイン・ニューホープ賞」に応募したのは新卒1年目の6月だったとうかがいました。どのような経緯でアワードを知り、応募を決めたのでしょうか。美術館に展示を観にいった際にニューホープ賞のチラシを見つけたのがきっかけでした。今回応募したキノコの菌糸体を素材にしたおもちゃキットは、大学の卒業制作で取り組んだ作品です。この作品にどれくらいの価値があり、自分のアイデアが社会的にどう評価されるのかを確かめるために、ニューホープ賞は絶好の機会だと思いました。菌糸体でものづくりをする楽しさや素材としての可能性を多くの人に知ってもらいたかったんです。 受賞作品の生えるおもちゃ「MYMORI」 また、卒業制作展のときに教授から「この作品は惜しいところがある」とコメントをもらったのが卒業後も印象に残っていて、もう少しブラッシュアップする余地があるかもしれないと思っていたのも、応募のきっかけのひとつです。今後、どういうデザイナーになりたいかを考えるためにも、もう一度多くの人に評価してもらえるチャンスだなと。――作品をブラッシュアップする絶好の機会になったんですね。改めて、今回最優秀賞を受賞した「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」の概要を教えてください。「MYMORI」は、家で育てるキノコの菌糸体を素材にした、3歳から10歳までの子ども向けおもちゃキットです。キノコの菌糸体という環境にやさしいバイオ素材を用いているのがポイントです。子どもたちはバイオ素材を身近に感じながら、キットを利用する体験によって能動的なものづくりを学ぶことができます。色を塗ったり、絵を描いたり、積み木やパズルのようにして遊んだりすることができる ――この作品に行き着いた背景には、どのような問題意識があったのでしょう。最初は同じゼミの友人に菌糸体の存在を教えてもらって。栽培するプロセスが楽しかったのと、出来上がったものの感触のよさなどに惹かれました。バイオ素材であるキノコの菌糸体は優れた耐熱性や軽さなどの特性があり、特にプラスチックの代替品として注目されることが多いです。もともとこうした「循環型のデザイン」みたいなものにはすごく興味があったのですが、菌糸体は単なるプラスチックの代替としてではない、新しいものづくりの素材としての可能性を感じました。加工が必要なプラスチックと比べて、家庭で簡単に制作できるのも利点です。今回の作品づくりの背景には、このバイオ素材が代替品を超えた次世代のスタンダードになればいいなという思いがありました。――そこから「おもちゃ」という形はすぐに導き出されたのでしょうか?おもちゃにいたるまでにはかなり悩んで、さまざまな形を試しましたね。お皿をつくったこともありましたが、市販のものに比べると丈夫さもなく、ゴミにならずに土に還る以外にメリットがあるのかなと疑問に感じて。これはまだ既存素材の代替に留まっているなと思いました。そこで、手触りもいい菌糸体が一番合うものは何だろう?と考え、おもちゃを思いついて。ザラザラした表面や軽い特質も活かし、最終的にパズルや積み木のような形状にたどり着きました。菌糸体は菌なので「なんとなく汚そう」と思われてしまうことも多く、そのイメージを払拭したいという狙いもありましたね。実際、キノコの菌はそこまで強くはなく、バイ菌が入るとすぐに死んでしまうような繊細で綺麗なものなんです。森の香りを感じたり、少し弾力がある感触もすごくいい。そうした素材自体に愛着を持ってもらうためにも、おもちゃというアウトプットは最適だったと思います。キットのビジュアルデザインにも力を入れました。
2024年5月15日(水)