• TOP
  • 読みもの
  • 【前編】美術予備校ってどんな場所?現役美大生に聞いてみた!

【前編】美術予備校ってどんな場所?現役美大生に聞いてみた!

item.sCaption
美術大学やデザイン・クリエイティブ系の学校への進学を検討しているみなさんが、一度は耳にするであろう「美術予備校」。一方で、美術を初めて専門的に学ぶという人には、実際どんな場所なのか、何を学べる場所なのか、わからないことも多いのではないでしょうか?


今回は、そんな美術予備校で学び、美大合格を掴んだ4人の先輩たちにインタビューを実施。


前編の本記事では、東京の御茶の水美術学院で学び、東京藝術大学 デザイン科に進学した稲葉さん、同大学 工芸科に進学した阪尾さんが登場。予備校で過ごした日々を振り返ってもらいました!


自分を客観視することで、
自分と違う人の良いところを吸収して成長できた

  • 稲葉このみさんのポートレート写真

     


  • 東京藝術大学 美術学部 デザイン科 在籍
    稲葉このみさん

    【受験した科目】
    一般選抜(実技:鉛筆写生、色彩、形体 学科:大学入学共通テスト)

    【予備校に通った期間】
    高校1年生の4月〜高校卒業まで

    「幼い頃から、絵を描いたり、ものをつくることに夢中でした。自分が考えたアイデアが形になっていくことへの楽しさを覚えた頃には、頭の中がデザインのことでいっぱいでした」






Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?

中学生の時に、ホームページやパンフレットなどで調べたり、両親と相談したりして選びました。なかでも御茶の水美術学院の講習内容や生徒の作品がすばらしく、無料体験に行ってみようと決めたのが中学2年生の春です。

体験ではデッサンの楽しさを知り、初めて多くの人たちと一緒の環境で描くことがとても刺激的でした。その後、その年の夏期講習、冬期講習を受講し、高校生になってからは1年生の春から高校卒業までの3年間通いました。

予備校を選ぶ際は、生徒のみなさんが描いた作品のレベルの高さと、予備校の雰囲気が自分の性格にあっているかを重視していたと思います。


Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 

高校1年生の頃は週2回のコース、2年生は週5回のハイレベルコース、3年生で夜間の藝大デザインコースに通いました。

藝大受験を本格的に考え始めたのは高校1年生の時。3年生になると東京藝大1校に絞り、デザイン科の対策に集中し、力を入れて取り組みました。どんな授業内容でも柔軟に、かつ自分らしく課題にこたえられるように意識していましたね。

デッサン、色彩、立体などすべてにおいて、まずは自分が納得できるものを目指して制作していました。

赤と白のグラデーションが美しい、空想上の花の絵

稲葉さんが取り組んだ、東京藝術大学 美術学部 デザイン科の令和6年度入試課題(色彩構成入試再現)。テーマは、世界に存在しない「あなたの空想する花」


 Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?

楽しむことができる人かなって思います。好きなことだからこそ、悩むこともあるけれど、そこで粘り強くやっていける人が向いていると思います。

メリットは、講師の方たちから高いレベルのノウハウを学べることと、多くの受験生とお互いに刺激を受けられることです。まわりと並ぶことで今まで以上に自分を客観視することができました。自分を客観視することで、自分と違う人の良いところを吸収して成長できたと思っています。


美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!


自分が美しいなとか、素敵だな、かっこいいな、と思うその感性を大切にしてほしいです。きっとその感性は何かを制作する時のエネルギー源やアイデアの引き出しになってくれるんじゃないかな、と思います。

自分が楽しんでつくっていると、見てる人にも伝わるというのは、受験時代に何度も経験して感じました。だから楽しむことを忘れないでほしいです。

辛くなってしまう時は、どうしたら自分を楽しい時の状態に持っていけるか、といった自己分析ができると、自分の強い武器になってくれると思います。


予備校は入試本番までの練習。挑戦することに躊躇せず過ごした

  • 阪尾瑞穂さんの自画像デッサン

     


  • 東京藝術大学 美術学部 工芸科 陶芸専攻 在籍
    阪尾瑞穂さん

    【受験した科目】
    一般選抜(実技:鉛筆写生、平面表現、立体表現 学科:大学入学共通テスト)

    【予備校に通った期間】
    2021年12月~2023年3月

    「2021年夏、陶芸を学びたいと思い立ち、東京藝大の工芸科を目標に定めました。当時は社会人として働きながら、時間を見つけて『ochabi art gym』という初心者向けのプログラムでデッサンを経験しました」


Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?

美術系大学に入学するには美術予備校に通う必要があるというのは聞いたことがあったので、インターネットで調べて予備校入学までの計画を立て、冬期講習から通い始めました。

予備校選びは、直観です!……が、振り返ってみると参考作品の印象が良かったのが第一の理由だと思います。素直に「きれいだな」と感じ、この予備校で学ぶことができればきっと自身もその方向に進むことができるのだろうと期待していました。

また、予備校のWebサイトが見やすいのも好印象でした。美術、デザイン系を学ぶにあたって、学校全体の高い意識が感じられたのが良かったです。入学後もそのカンは外れてなかったように感じました。


Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 

工芸科の昼のコースで学びました。美大受験においての表現というものが初めてで、その基準を理解するまで試行錯誤しましたが、先生方から多角的なアドバイスをいただき無事落とし込めるようになりました。

デッサンが弱かったのでそこに力を入れつつも、メンタルや疲労が制作に影響すると感じていたので、適度に休みながら、嫌いにならないよう取り組みました。全体を通して「モノの見方」「表現するうえでの考え方」を予備校で鍛えることができ、受験後もその感覚は常に役立っています。


花、水滴、タイルのようなもので構成された平面作品と、2つの箱のような造形と1つの木片のような造形が組み合わさった立体作品阪尾さんの平面表現、立体表現作品。こうしたイメージ課題は自分の得意な表現へと寄せることができるため、楽しく、得意だったそう

 

Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?

失敗を恐れない人。失敗から学べる人。失敗を失敗で終わらせず前向きに受け取り、食らいついていけると強いと思います。

予備校は入試本番までの練習なので、挑戦することに躊躇せず過ごしていました。予備校に通っていて良かったことは、「同じ課題に対して同じ作品を作る人が一人もいない」という表現そのものの無限の可能性を感じられたことです。毎日がとても刺激的でした。

また、予備校期間の課題への取り組みや、他の生徒との比較の中で、自分自身のもつ強みや弱みを知ることができ、とても有意義な修業期間でした。特に私が通った御茶の水美術学院は受験の型にはめようとせず、それぞれの生徒の個性を大事に伸ばしてくれたので本当に良かったです。


美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!


受験作品の制作に限らず、展示や自然、日常にあるデザインなど、たくさん見て感じる時間も大事です。

自分自身が表現したものを毎日比較や評価されるというのは辛さもありますが、ここでの評価が「美術」自体の正解というわけではないと思うので、たまには課題からズレても「楽しい!」を求めて制作するなど、根を詰めすぎず取り組んでみてください。

社会人からの美術受験も発見が多く、有意義でおすすめです。想像以上に体力が必要でした!受験期のアレコレを漫画にまとめていますので、興味があればぜひこちらも覗いてみてください。


取材協力・御茶の水美術学院


御茶の水美術学院の外観


東京・御茶の水で60年以上続く芸大・美大受験予備校。小学生~高卒生の生徒や社会人経験のある方が、基礎から受験対策まで、個々のレベルに合った指導を受けることができる。2024年は東京藝術大学 デザイン科の合格者数が全国1位となり、18年連続1位を達成。デザイン系学科の高い進学実績を誇る。

■御茶の水美術学院公式サイト https://gakuin.ochabi.ac.jp/

関連記事

読みもの

PR
ニュース

学生限定!「長谷工住まいのデザインコンペティション」が開催。高校生の応募歓迎

マンション開発を中心とした大手建設会社・デベロッパーの株式会社長谷工コーポレーションが主催する、「第18回 長谷工住まいのデザインコンペティション」。応募対象は高校生・大学生をはじめとした学生で、「集合住宅の新しいあらわれ」をテーマに、2024年11月5日まで建築プランを募集します。都市を構成する重要な要素である、建築の外観(あらわれ)を改めて問う今回のコンペ。審査員には「Dior Ginza」などで有名な建築家の乾久美子さん、同じく建築家の藤本壮介さん、増田信吾さんなど、第一線で活躍する豪華メンバーが並びます。さらにゲスト審査員として、コミュニティやケアの領域で制作、実践、研究、提案を行う文化活動家・アーティストのアサダワタルさんも参加。審査は、1次のアイデアコンペで選出された上位4組が2次に進み、模型の提出・プレゼンテーションを行う2段階方式。最優秀賞1点には100万円、優秀賞3点には各50万円、佳作10点には各10万円が授与されます。9月30日までに応募登録を行うと、昨年の審査の様子を収めた動画を視聴できる特典も。ぜひ、新しい都市の景観を生み出すような集合住宅の「あらわれ」を提案してみてください。
2024年8月1日(木)

KNOCK vol.1 -【結果発表】 デザインノトビラ「KNOCK」メイングラフィック募集

 結 果 発 表 個性豊かでフレッシュな魅力にあふれた作品の数々をご応募いただき、誠にありがとうございました。編集部の審査を経て、見事入選を果たした作品を発表いたします。最優秀賞「感性を刺激する強いノック」中西 達海神奈川大学附属高等学校 2年作品コンセプト“KNOCK”と聞くとドアを叩く様子を思い浮かべるが、それだけではない。私たちは五感で何か強い刺激を感じ取った時、今までにない新しい発想を生み出す。それらの外部からの刺激は、今までの常識や固定概念を打ち砕く自分自身への「ノック」である。この作品ではデザイン性も意識し、リアリティを追求するのではなく平面的な表現になるように作成した。今までの常識を強いノックで打ち砕く迫力を表現した。審査員による講評高校生の若さからくる力強さ、将来に向かって挑戦する情熱や意思が伝わってくる作品。作品のコンセプトが企画の趣旨と合っており、トビラをノックするという難しい表現を逃げずに描けていると思います。「自分がノックする」だけでなく、「外部からの刺激が自分をノックしてくる」という発想は、これからさまざまなものに触れ、感受性豊かに学んでほしいという編集部の思いとも合致しています。また、応募作品は筆や絵画などの具体的な表現が多かった中、本作は「五感」を意識して抽象的に表現されていて、「五感」や「目に見えないもの」をデザインしていくことが増えているデザイン業界にマッチしていると思い、受賞作品に選びました。審査員特別賞「輝きの中へ」山口 紗瑛野沢北高等学校 1年作品コンセプト新しいことや楽しさで満ちた、鮮やかに輝いているデザインの世界に胸を躍らせる気持ちをイメージしました。審査員による講評高校生らしいフレッシュさが魅力の作品です。女の子の瞳や表情からは不安とワクワクが入り混じった様子が伝わり、これから進路を考えようとする高校生のみなさんの背中をやさしく押してくれるのではないかと思います。また、カラフルな色づかいからは、「多様さ」や「未来の可能性」といったイメージが連想され、デザインノトビラが発信するデザイン・クリエイティブ領域の学びのイメージとも合致しており、掲載した際のサイトとの相性の良さも評価につながりました。審査にあたり、受賞作品の「感性を刺激する強いノック」との接戦を繰り広げた本作に、特別に賞を授与いたします。募集要項(募集は締め切りました)出題テーマデザインノトビラ新企画「KNOCK」のメイングラフィック募集この企画の趣旨「高校生のみなさんに、デザインの世界へのトビラをノックしてもらう」という内容に沿った、自由な発想の作品を募集します!「わくわくする気持ち」「将来に向かって挑戦する情熱」「道が開けていく様子」など、前向きで明るいイメージを求めます。賞最優秀賞(1点)Amazonギフトカード3万円分、作品を企画のメインページグラフィックに採用※該当なし(採用作品なし)、あるいは、内容が変更となる場合があります応募締切2024年8月30日(金)15:00までにフォームから投稿※終了しました参加資格下記いずれかに該当する方高校または高等専門学校に在籍している方高校卒業あるいは同等の資格をお持ちで、美大やクリエイティブ系の大学・専門学校等へ進学を希望している、20歳以下の方審査員デザインノトビラ&JDN 編集部美術・デザイン系学校出身のWebエディター4名が担当!日々、日本中のデザインに触れているプロの編集者たちが、あなたの作品を審査します。
2024年7月16日(火)

コンテスト型新企画「KNOCK」スタート!企業が高校生の作品を募集

高校生向けコンテスト型の新企画「KNOCK」とは?「絵を描くことが好き」「アイデアを考えることが好き」「ものづくりが好き」というデザイナー・クリエイターの卵のみなさん!クリエイティブを学び、将来を考える人のための情報サイト「デザインノトビラ」は、そんなみなさんから作品・アイデアを大募集する新企画、「KNOCK」をスタートします。「KNOCK」では今後さまざま企業が不定期にテーマを出題。高校生のみなさんだからこそ生み出せる、フレッシュで自由なアイデアや作品を募ります! 将来を考えるきっかけとして、作品発表の場として、まずは「KNOCK」でデザインのトビラを叩いてみませんか?高校生が「KNOCK」に応募すると、いいことが!あなたの作品が社会に出るチャンス!企業・クリエイターに作品を審査してもらえる!素敵な賞金や賞品がもらえる!応募のしかた募集中のテーマ一覧から挑戦したいテーマを選ぼう!締切までに作品をつくろう!作品応募フォームへの投稿で、応募完了!決まった期日まで、ドキドキしながら結果を待とう……!募集中のテーマ(新着順)ただいま募集は行っておりません。新しいテーマの発表をお楽しみに!これまでに募集したテーマデザインノトビラ(株式会社 JDN)「KNOCK」のメイングラフィック募集(8月30日15:00締切)始まったばかりの新企画「KNOCK」のメイングラフィックを大募集!サイト内で注目を集める、すてきなグラフィック作品を募集しました。最優秀賞(1点) Amazonギフトカード3万円分、作品を企画のメインページグラフィックに採用このテーマの募集要項を見る今後も続々と、このページでテーマを出題していきます!
2024年7月16日(火)
ニュース

大賞は穴吹デザイン専門学校2年生!「日本パッケージデザイン学生賞2023」の入賞作品が決定

公益社団法人日本パッケージデザイン協会(JPDA)が主催する、学生向けのアワード「日本パッケージデザイン学生賞2023」の入賞作品が決定。大賞に選ばれたのは、穴吹デザイン専門学校2年生の綾野裕次郎さんの作品「ボーッと⼊浴剤」です。パッケージデザインの新しい魅力と価値を学生と共に発掘・伝播していくことを目的に開催される「日本パッケージデザイン学生賞」。第2回となる今回は「ひらく」をテーマに、オリジナリティのあるパッケージデザインのアイデアが3カ月間募集され、全国の大学・専門学校から513点の応募がありました。受賞作品のべ29点のうち、大賞に選ばれた作品「ボーッと⼊浴剤」は、開封後は船となる入浴剤のパッケージ提案です。ゴミになる入浴剤の袋を、楽しいものに変えたいと考えた作品です。審査委員からは、「不要さトップクラスの入浴剤のパッケージを一気にプラスにする提案」「捨てることのできるおもちゃという視点でもとても実用的」「夢や遊び心を表現しながらも、社会課題に答えているスマートなデザイン」などの評価を得ましたなお、今回の入賞作品は、2025年5月刊行予定の『年鑑日本のパッケージデザイン』に収録されます。
2023年12月11日(月)