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【後編】美術予備校ってどんな場所?現役美大生に聞いてみた!

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美術大学やデザイン・クリエイティブ系の学校への進学を検討しているみなさんが、一度は耳にするであろう「美術予備校」。一方で、美術を初めて専門的に学ぶという人には、実際どんな場所なのか、何を学べる場所なのか、わからないことも多いのではないでしょうか?


今回は、そんな美術予備校で学び、美大合格を掴んだ4人の先輩たちにインタビューを実施。


後編の本記事では、東京の御茶の水美術学院で学び、東京藝術大学 建築科に進学したK・Tさん、多摩美術大学 グラフィックデザイン科に進学した渡辺さんが登場。予備校で過ごした日々を振り返ってもらいました!


予備校は同じ目標を持った仲間が集まる場所。
想像以上にたくさんの発見がある


  • 東京藝術大学 美術学部 建築科 在籍
    K・T さん

    【受験した科目】
    一般選抜(実技:空間構成、総合表現 学科:大学入学共通テスト)

    【予備校に通った期間】
    高校2年生の夏から1年半

    「進路を考えはじめたのは高校に入ってから。その後、東京藝術大学を受験することを決めたタイミングで、美術予備校を探し始めました」




Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?

まず、短期間で予備校の様子を知ることができる春季講習をいくつかの予備校で受講しました。そのなかで、自分の制作スタイルに合うところを探しました。 

選ぶ際に重視したのは、通いやすさや授業の雰囲気です。


Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 

通っていたコースは、建築科の土日コースでした。基礎課題から過去問まで、受験の内容に関わらずさまざまな課題に取り組み、課題に対する自分なりの一貫した考えを表現することを学びました。

特に入試直前の期間は、限られた試験時間のなかで自分が提案する案を他の人にどれだけわかりやすく、説得力をもって伝えられるかを考えていましたね。

「向き合う空間」をつくるという課題でK・Tさんが制作した作品。いくつかのボリュームとそこに入り込むひとつながりの平面を、「湖」の環境のなかに配置した

 Q.美術予備校に通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?

予備校は同じ目標を持った仲間がたくさん集まる場所で、互いに意見を伝え合ったり教えてもらったりするなど、想像以上にたくさんの発見があります。

実際に建築科では休み時間のたびに他の人の提案を聞いたり、自分の考えていることを聞いてもらったりして、講評会までの間にどんどん案をブラッシュアップしていくことができました。

また、予備校に通ういちばんのメリットは現役で大学に通っている先輩方が講師を務めていることだと思います。大学での様子を聞いたり、悩みの相談をしたり、受験生時代にどのような対策をしていたのかを聞くこともできます。

時々、講師の方が入試のデモンストレーションをしてくださったのも予備校に通っているからこそのことで、私にとってはとても良い経験でした。


美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!


予備校に通い始めると、一緒に頑張ることのできるたくさんの仲間がいて、刺激をたくさん受けると思います。その中で他の人と比べて自分の作品が劣ってるように見えたとしても、自分にしかできない表現ができていたら、自信を持って制作を進めていってほしいです。

その独自の表現を見つけ出すのが苦しい時もきっとあると思います。そういう時はあまり考え込みすぎず、好きなことをする時間をとって、いいバランスで受験期間を過ごしてほしいと思います。


無自覚だった自分の長所に気付いてくれたのは、
予備校の先生だった


  • 多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科 在籍
    渡辺蓮 さん

    【受験した科目】
    一般方式(実技:鉛筆デッサン、色彩構成 学科:大学独自試験)

    共通テスト1方式(鉛筆デッサン、色彩構成 学科:大学入学共通テスト)

    【予備校に通った期間】
    高校卒業後の春~1年間

    「昔からデザイン、美術に興味があり、高校在学中から美大を目指すことを視野に入れていました。でも、自分の実力で目指しても大丈夫なのだろうか、もし入れたとしても将来美術系の仕事に就けるのだろうかという不安がありました」


Q.どのように美術予備校を選びましたか?また、選ぶ際に何を重視しましたか?

私が予備校に通い始めたのは高校を卒業してからです。将来への不安などもあり現役では美大を受験せず、浪人して予備校に通い、美大を目指しました。

予備校選びについては、進学実績を見てお茶の水美術学院を選びました。本当はさまざまな予備校の体験授業を受けて学校の雰囲気を見た方が良かったかもしれませんが……。今ではお茶美を選んで本当に良かったと思っています。


Q.美術予備校ではどのようなことを学びましたか? 

私大デザイン平面系コースの昼間部に通っていました。同コースには、入試で出題されるデッサン、色彩構成を中心に、立体造形、ロゴデザインなどの授業もあります。とにかく多くの作品を制作し、自分の美意識や思考の傾向を分析していくことで、自分の力を最大限発揮する術を学びました。

特に自分の実力が伸びたと感じたのは夏期講習です。お茶美の夏期講習には、ほかの予備校や藝大コースから来た人を含めて多くの実力ある受験生が集まっていました。その中で自分の絵を並べ、客観視できたことで、周囲との差のつけ方、訴求力の高め方などを整理できたように思います。

また、私が未経験から1年で美大に合格できたのは、お茶美の先生方が長所を発見してくれたことも大きいと感じています。当初は自分の文字に対する嗅覚や、モチーフを細部まで観察する力に無自覚でした。先生方がそこを褒めてくださったおかげで、その力を活かせる構成で本番も戦えたように思います。

 

Q.どのような人が美術予備校の受講に向いていると思いますか?また、通うメリットにはどのようなことがあると思いますか?

美術予備校の受講に向いているのは、5時間、10時間でも1枚の絵と向き合い続けられる人だと思います。絵を描いている時は常に思考を目の前の絵に注ぐ必要があるため、かなり大変です。もし、1度でも長時間集中して作品を描きあげた経験があるのなら、自信を持って美術予備校を受講するべきだと思います。

ただ、予備校に通わず家や高校で長時間続けて制作をするには、特殊な環境が必要です。独学では、長時間絵と向き合う能力があるのか確信を持つことは難しいと思います。

少しでも美術に興味がある方は、予備校で、誰にも邪魔されない環境で絵を描いてみてください。そこで自分にその力があるのか試してみるといいのではないでしょうか。


美大受験を目指し、これから美術予備校に通う後輩に向けてアドバイス!


制作には、描き出しから完成まで考え続ける体力が必要なので、健康が何より大切です。たくさん食べて、たくさん寝て、たくさん予備校に行ってください。それから、他人の講評をよく聞くこと、本を読むことも役に立つと思います。

他人の講評を聞くことは、自分の美意識の分析に役立ちます。自分がいいなと思った絵に対して、あの先生はどうコメントするのだろうかとか、この絵は先生からは褒められているけど自分はここが気に入らないといったことなど、自分が気にしているところ、あまり気にしていなかったところがよく分かります。

また、自分にとって想像できる世界が広ければ広いほど美術で表現したいことも増えて楽しくなるはず。本を読むことで、読解力と想像力を補強できると思うので、習慣的に読んでみるといいのではないでしょうか。


取材協力・御茶の水美術学院


御茶の水美術学院の外観


東京・御茶の水で60年以上続く芸大・美大受験予備校。小学生~高卒生の生徒や社会人経験のある方が、基礎から受験対策まで、個々のレベルに合った指導を受けることができる。2024年は東京藝術大学 デザイン科の合格者数が全国1位となり、18年連続1位を達成。デザイン系学科の高い進学実績を誇る。

■御茶の水美術学院公式サイト https://gakuin.ochabi.ac.jp/

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KNOCK vol.1 -【結果発表】 デザインノトビラ「KNOCK」メイングラフィック募集

 結 果 発 表 個性豊かでフレッシュな魅力にあふれた作品の数々をご応募いただき、誠にありがとうございました。編集部の審査を経て、見事入選を果たした作品を発表いたします。最優秀賞「感性を刺激する強いノック」中西 達海神奈川大学附属高等学校 2年作品コンセプト“KNOCK”と聞くとドアを叩く様子を思い浮かべるが、それだけではない。私たちは五感で何か強い刺激を感じ取った時、今までにない新しい発想を生み出す。それらの外部からの刺激は、今までの常識や固定概念を打ち砕く自分自身への「ノック」である。この作品ではデザイン性も意識し、リアリティを追求するのではなく平面的な表現になるように作成した。今までの常識を強いノックで打ち砕く迫力を表現した。審査員による講評高校生の若さからくる力強さ、将来に向かって挑戦する情熱や意思が伝わってくる作品。作品のコンセプトが企画の趣旨と合っており、トビラをノックするという難しい表現を逃げずに描けていると思います。「自分がノックする」だけでなく、「外部からの刺激が自分をノックしてくる」という発想は、これからさまざまなものに触れ、感受性豊かに学んでほしいという編集部の思いとも合致しています。また、応募作品は筆や絵画などの具体的な表現が多かった中、本作は「五感」を意識して抽象的に表現されていて、「五感」や「目に見えないもの」をデザインしていくことが増えているデザイン業界にマッチしていると思い、受賞作品に選びました。審査員特別賞「輝きの中へ」山口 紗瑛野沢北高等学校 1年作品コンセプト新しいことや楽しさで満ちた、鮮やかに輝いているデザインの世界に胸を躍らせる気持ちをイメージしました。審査員による講評高校生らしいフレッシュさが魅力の作品です。女の子の瞳や表情からは不安とワクワクが入り混じった様子が伝わり、これから進路を考えようとする高校生のみなさんの背中をやさしく押してくれるのではないかと思います。また、カラフルな色づかいからは、「多様さ」や「未来の可能性」といったイメージが連想され、デザインノトビラが発信するデザイン・クリエイティブ領域の学びのイメージとも合致しており、掲載した際のサイトとの相性の良さも評価につながりました。審査にあたり、受賞作品の「感性を刺激する強いノック」との接戦を繰り広げた本作に、特別に賞を授与いたします。募集要項(募集は締め切りました)出題テーマデザインノトビラ新企画「KNOCK」のメイングラフィック募集この企画の趣旨「高校生のみなさんに、デザインの世界へのトビラをノックしてもらう」という内容に沿った、自由な発想の作品を募集します!「わくわくする気持ち」「将来に向かって挑戦する情熱」「道が開けていく様子」など、前向きで明るいイメージを求めます。賞最優秀賞(1点)Amazonギフトカード3万円分、作品を企画のメインページグラフィックに採用※該当なし(採用作品なし)、あるいは、内容が変更となる場合があります応募締切2024年8月30日(金)15:00までにフォームから投稿※終了しました参加資格下記いずれかに該当する方高校または高等専門学校に在籍している方高校卒業あるいは同等の資格をお持ちで、美大やクリエイティブ系の大学・専門学校等へ進学を希望している、20歳以下の方審査員デザインノトビラ&JDN 編集部美術・デザイン系学校出身のWebエディター4名が担当!日々、日本中のデザインに触れているプロの編集者たちが、あなたの作品を審査します。
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2023年12月11日(月)