――少し遡りますが、専門学校時代はどんな学生でしたか?
高校卒業時は、将来グラフィックデザインをやるか映像をやるかでブレていた時期でした。
それで、1年の前期に全学科の領域に触れた上で専門科目を選べるアサビに進学したのですが、今とはまた違った、カッチリとしたデザインを組む真面目な学生でした。「かわいい」とかポップな作風からは縁遠かったですね。
――そうだったのですね。映像と迷われて、やっぱりグラフィックデザインの道に進まれたのはなぜでしょうか。
絵コンテからつくって一つの作品を撮るのも楽しいのですが、やっぱりグラフィックデザインの方が好きだし、やっていて「楽しい」のパーセンテージが上回ると改めて気付いたんです。だから映像は見て楽しめればいいと思って、グラフィックデザインに専攻を決めました。
――そんな学生時代の学びの中で、今に活きているのはどんなことですか?
アサビで有名な書体の先生から文字組や誌面に文字をレイアウトしていく「組版」をしっかり学べたことですね。
CGをつくる際や文字を流し込むときに細かい組版が必要になるので、基礎から応用まで、独学ではなくきちんと学べたことが今に活きていると感じます。
これは学びとは少し違いますが、1年の前期に専攻が定まらない状態でみんなが各分野を学ぶので、さまざまなフィールドの友人ができたことも財産です。知らない分野のことが知れてとても勉強になりましたし、今仕事をする中でもその繋がりが役立っています。
――グラフィックデザイナーを目指す上で、高校時代にやっておくといいと思う玉野さんなりのアドバイスがあればお願いします。
社会人になるといろいろとお金もかかり、自由な時間も取りづらくなります。だからこそ映画や美術館など、学割を使って安く行ける場所にどんどん行って、引き出しを増やしてほしいですね。
今は若いうちからSNSでたくさんのフォロワーを抱えてイラストやデザインを発信している方もたくさんいますが、焦る必要はなく、いろいろインプットする中で自分の好きな分野やコンテンツを深掘りしていくといいと思います。
私は図書館も学校から市の施設まで活用しまくっていました。美術系の本に限らず装丁がかわいいと思ったら借りて、奥付のデザイナーさんの名前を調べたりしていました。
単純に図書館をうろうろして、いろいろなジャンルの本を見て回るのも好きです。お金もかからないので、有効活用すると楽しいと思います!
――最後に、玉野さんが目指すクリエイター像を教えてください。
私自身、もともとグラフィックデザインやデザイナーに詳しいタイプではありませんでした。単純に自分の感性にふれるものを集めて、体や手を動かしていた結果今があるので、これからも自分の「好き」ややりたいことを信じて仕事をしていきたいと思っています。
もちろん知識があるに越したことはありませんが、グラフィックデザイナーになりたいからといって、優秀なデザインを集めた専門書ばかり見ていてももったいないですよね。幅広いところからデザインの要素を抽出して吸収する方が楽しいと私は思えたので、これからもそんなふうに自分の知見を広げていきたいです。