街を歩いているとずっとその場所に放置している乗り物を目にする。家の前の道路でも放置された自転車やバイクをよく目にしていた。忘れられたのか捨てられたのかは私には知る由もないが、私には彼らが帰るべき場所を失い、自分の居場所を探しているような寂しさや孤独さを憶える。私はそんな姿を夢想し、帰る家を探す動物の姿と重ねてしまう。
無くしたものは忘れた頃にふとした場所から出てくる。数年前に無くした時、もっと言えば先週にだって同じ場所を探していたはずなのに。そんな時は物の方から自分の元へと帰ってきたのだろうと私は思う。
犬を含め、いくつかの動物は「帰巣本能」を持つ。それは離れた場所からも自分が帰るべき場所へと向かっていく力である。トラックによって遠くの場所に運ばれてきた「彼ら」は、自分の帰るべき場所に向かうため、ぽつりぽつりとこの場を後にする。