石のテクスチャをニットで再現し、人が自然と共生できる空間づくりを目指した。
近年、工業製品が暮らしに溢れていくなかで手工芸や自然物が再評価されている。そのなかでもニット技法は、古くから扱われてきた馴染み深い手仕事の一つである。
修士研究では、ニットの素材表現を行いながら岩石の収集を行ってきた。その過程で、ニットと岩石の組成による共通点が見えた。異なる性質を持つそれぞれの要素が一体化し、一つの物質として形成されているという点で、ニットと石の組成は共通していると考えた。
上記の考察から、収集した岩石からそれぞれのテクスチャを抽出し、それらをプロダクトに落とし込んだ。展開したプロダクト群は、スピーカーや照明、ポプリなど、音や光、匂いといった形のない要素を発生させるためのオブジェクトで構成されている。
現代では、それらのような機能を持つプロダクトは、人工物の形状をもって我々の生活の中に存在している。しかし、製品の小型化が進むなかで、形態に機能を結びつける必要性がなくなりつつある。石の形状に音や光、匂いのような実像のないものを機能として埋め込むことで、室内空間に実像のないプロダクトを配置することができる。