筆者が暮らす神奈川県では、都市部と地方における格差の問題が発生している。問題解決のため、交流を目的とする施設提案を行う。人々が出会い、巡り合うことを意味する「巡環」を、用途・動線・デザインの3点において取り入れた、子育て支援施設、地域交流施設、移住支援施設の複合施設を計画する。
デザインコンセプトは「自然に倣う建築」として、湘南地域に位置する二宮町の海辺の風景を建築によって創出する。建築物は防風林として町を守る松を、施設全体を覆う大屋根は町のシンボルである相模湾の水面から着想を得ている。
松ぼっくりの特性であるフィボナッチ数列に従い生み出された滑らかな曲線形状の屋根から、空間に柔らかな光を取り入れる。また、平面計画においても同原理を用いてゾーニングし、四角形が生み出す雁行した形態は、人々が出会い、巡り合う場を創出する。
水面を抽象化した2層の大屋根は、相模湾の特性である2つの異なる海流が流れ、その潮目に生物が集う、自然の法則から形態を創出している。2つの大屋根が交わる潮目に、アプローチ兼広場を設け、人々の交流を促す場としている。
自然に倣う建築が織りなす空間で感じる、うみべのおもかげ。
受賞歴
2023年:建築学縁祭2023 100選(入賞)