現在、福祉介護施設は全てバリアフリーにすることが義務付けられているが、それによって逆に身体が衰え、健康寿命を短くしているのではないだろうか。また「人付き合いがない」と感じることがあると回答した独身高齢者は約7割で、精神的なケアも求められており、今後は「要介護」状態になる前から福祉施設への入居検討が必要になると推測する。
そこで私は、健康とバリアフリーの関係、少子高齢化、生涯未婚率の増加を紐付けて考察し、今後本当に必要とされる新しい集合住宅の姿として「フルバリアの家」を提案する。
コンセプトは「心理的に負担を感じることなく、健康寿命を長くする」、ターゲットは「50代後半~要介護までの独身ミドルシニア」である。
「フルバリアの家」は生活中の段差や部屋を移動する際の歩数をあえて増やし、日常での運動量を増加させ、健康寿命を伸ばす住宅である。また退職後のコミュニティの確立を目指し、日常的コミュニケーションがある場に属することで心理的孤独を防ぐ。
建築を身近な生活運動施設として捉えた今回の提案により、建築・福祉業界のバリアフリーの立ち位置や、独身ミドルシニアの将来への不安が少しでも変化することを期待する。