私が捉えた「わたし」の一つの答えである。
「わたし」という存在を流動的なものと捉えられないと思っている。部屋を見るとその人の性格が分かると言われるように、私は身体を一つの建築物として捉え、内部を覗くことで「わたし」の姿が見えてくるのではないかと考えている。
この考えは、関節リウマチという病気にかかった経験に基づいている。免疫系が自分の組織を攻撃し、関節に炎症と痛みが生じる病気である。ウイルスや細菌の侵入ではなく、身体が内部で戦争を繰り広げているように感じた。協調と対立が交互に繰り返される中で、私自身が制御できない部分も、それぞれの自己意識を持って身体という建築物の中で共存していると感じるようになった。
また、幼い頃からアニミズムという概念に影響を受け、世界を理解しようとしてきた。動物や無生物は、人間とは身体的には異なる存在だが、内面的には類似していると考えてきた。体内の一つ一つの臓器にもアニミズムが宿るのではないかと考え、自分自身の仕組みを探求し始めた。
この作品では、体内の各地域の風景や住民たちを描いた暖簾のような絵を潜り抜けて「わたし」の様子が徐々に見えてくる自画像となっている。
2022年:平山郁夫奨学金
2023年:第71回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 三菱地所賞