ウッドホーンはとてもプリミティブな音響装置です。音を拡張し指向性を持たせて伝えます。音の特性によって決まった“指数関数”そのままの形をした空洞です。そして、この空洞は指数関数の特性上どこまで延長しても決して0にはなりません。つまり、地面に突き刺したウッドホーンは遥か彼方、ブラジルやウルグアイ、アルゼンチンにだって伸びることができます。アルゼンチンに飛び出したウッドホーンは限りなく0に近い空洞ですが、確かにその場所の空気の震えを日本に伝えるかもしれません。1億年変わらない波の音とか、ゾウアザラシのおならとか、誰かのため息。既に同じ大気の中に生きる我々はそのことを感じ取ることができるはずです。地球の裏側も私の大切な一部だと、思いながら生きることが出来たらとても愉快ですね。
どうか良い旅を。
2021年:第69回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 サロン・ド・プランタン賞 杜賞