漫画は登場人物やその周辺の動きが重要になっていくものであり、その中でどう動かし、場面展開していくのかが読者を惹きつける鍵となってくる。漫画において動きがないものは現代の漫画とは言えず、ただ自分が描きたいものを見せているだけである。
私が考える漫画の動きは、ただの一枚絵ではなく動作の瞬間を描くことで、動く一枚絵になることである。“歩く”や“走る”といった動作には必ず前置きの動作が存在しており、その動作を抜き取り、漫画の動きとして描き起こすのである。だがこれは基本の漫画の動きであり、バトル漫画や他の感情の動きなどでは、動く場面を描くことで伝わるが、読ませるには至らない。
ではバトルと感情の動きには何が必要なのかそれは“動”と“静”である。一見すると全て動きで構成されると思うが、実際には“動”と“静”を駆使して動きが描かれている。動く前置きの動作は動きを判断させるためのものだが、もう一つの“静”の動きとしても作用される。漫画は動く瞬間から動き終わるまでの一連の動作を描くことはできない。だがこの“動”と“静”を意識することで限られた動きのみで絵や場面を繋ぎ、確実な動きを見せることができるのである。