私の作品はペインティングした布に、糸を通してしわを寄せるようなスモッキング刺繍やシャーリングを施しています。これらの手法は直線裁ちの着衣にも用いられており、素材が身体などの形や空気を纏うことができます。
しわの影や歪んだ外枠の形、色彩と素材を行き来する糸によって、表面のイメージだけでなく物質的な存在感、モノから空気へ繋がる余白を広げることができるだろうという思いから、この手法を作品に取り込んでいます。そして、絵の具や糸、キャンバス布という素材が絵画になるような間の瞬間を行ったり来たりしながら形を留めます。
選ばれた素材と、自身が心地よく時にやわらかく密やかな関係性であること。
やわらかさ。
密やかさ。
作品と作品が在る環境。
こういった目の前の機微に触れることや、形が留められた姿の構造を知ることは、まだ見えていなかった世界の奥行きを知ることと考えます。この世界の奥行きにアクセスすることを、作品と制作に期待しています。またこれは、私にとっての自ら決めることのできる絵画の構造の手立て、新たな方法となっているのです。