1200度の熱で溶けたガラスに息を吹き込んだり、道具で触れたりして形を変化させ、冷める前にガラス同士を繋いでいく。
溶けたガラスは、重力によって動き回るかと思えば、外気に触れてすぐに冷めて割れてしまい、1秒ごとに表情を変える生き物のようである。そんなガラスを繋いでいくためには人と息を合わせて作業をする必要がある。
溶けたガラスに触れる時、私は一瞬を強く意識する。溶けたガラスで形を作ることはわずかな時間で行われる。
その中には、自分の内側での迷いや決断の繰り返しと、人とのかけ合い、温度や重力など自分の外側にある世界との関わりが存在する。
制作を進める中、ガラスに触れる一瞬にある関わりは、私たちの日常にも存在するのではないかと考えた。
変化の少ない日々の中では、毎日が同じであるかのように感じてしまう。しかし、溶けたガラスに触れていると、今と同じ瞬間はひとつもなく、たくさんの感情と周囲との関わりが凝縮された一瞬の繋がりによって日常ができていると気付かされる。
私にとって溶けたガラスに触れることは、世界との関わりを感じながら忙しない日々の中にある今を捉え直す行為なのである。