肩を並べる、手がかかる、膝を交える、背中を預ける。
「ふれ在る」は、慣用句をもとに人とのふれあいを生み出す体験型の装置である。
ここ数年のコロナ禍によるパンデミックは、人とのさりげない接触を減少させた。見知らぬ人が落としてしまった物を拾うことや、目の前で転んでしまった子どもに手を差し伸べることすら、戸惑いや躊躇が生まれるようになってしまった。
しかし、日常のさりげない接触によって私たちは誰かを支え、そしてまた誰かに支えられてきた。落ち込んでいるときに友人に背中を撫でられること。何かを成し遂げたときに仲間とハイタッチをすること。帰りの電車でお互いの肩をもたれさせること。手を引かれて歩くこと。お互いが触れ合っているその少しの境界に、私たちは何度も助けられている。
目の前にいるのに、どこか不安になってしまうその人の存在感は、触れることで確信に変わる。「ふれ在る」は、目の前の相手も自分自身も「触れる」ことで互いの存在を感じ合うことができる。