大和言葉をモチーフに、その言葉から感じた印象や浮かんだ情景を概念的に表現し、四季の流れに当てはめた。有線七宝と、就職先の会社で出会った新しい素材「VeroMetal」を用いて、重ねる・磨くなどの共通する表面のマチエールに着目し、双方ならではの表現や伝統的なものと新しいものの融合、関わり合いについて研究した。
大和言葉とは、古くからある日本固有の言葉である。(雅語) 言葉を耳に入れ想像する時には明確な形はなく、眼裏にその景色がぼんやり浮かぶ。今回は、四季やその時間の流れなどを指し、直接的でない言い回しがあり、かつ音が美しいと感じたものをモチーフとして選んでいる。また、色彩は平安時代から十二単などで使われてきた季節を表すカラーパターン「襲かさねの色目」に準じ、一作品につき数種組み合わせて用いた。
VeroMetalとは、塗る金属と呼ばれ、塗装後に研磨を行うことで塗膜表面の金属成分が95%以上になる特殊な塗料である。これにより異素材の表面のみを金属に置き換えることが可能になり、サイズや重量、加工方法やコストなどの面で従来の金属では難しかった部分に手が届く新しい発想の素材である。