日本語は漢字、ひらがな、カタカナの文字をもつ。これらの文字にはコミュニケーションツールとしての記号としてだけでなく、一文字一文字は今に至るまで昔や未来の人々の営みがあり、文字自体が時代を記憶することのできる存在であると考えた。
漢字は目の前の世界を象り、古代の人々の営みや精神を刻むことから生まれ、使われ続けている。例えば私の名前に与えられた「歌」という漢字は神様への祈りの姿や儀式の様子が形になったものだ。しかし今の私たちが想像する「歌」の情景は変化し、昔とは違う解釈で扱っているが、字体そのものは昔のまま変わらずに今もなお使い続けている。
甲骨文字から漢字に成るまでの形の変化はあれど、私たちは文字の原型にある人々の営みや思いを残しつつ時代ごとの解釈を与え扱い続けてきた。この先も私たちが扱う文字は人々の営みに寄り添うだろう。
文字の存在は時代の連鎖性を感じさせ、人々が営む中で不可欠なものであり、これから先もその時々の人の想いをのせて私たちを繋ぎとめる存在であり続けると信じている。
2023年:第71回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 メトロ文化財団賞
2025年:第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 サロン・ド・プランタン賞