私たちが耳を澄ました時に、心穏やかになれるような音がどれほど生活の中にあるのだろうか。
例えば、葉っぱのさわさわした音。
木がカランとなる音。
鐘がボーンと鳴り響く音。
それぞれ美しい木と鉄の「素材」の音だが、今の暮らしの中でこれらの音を聞くことはあまりなく、それどころか私たちの生活では樹脂の机が甲高く鳴る音だったり、プラスチックのペットボトルが潰れる音だったり、そのような情緒のない音で溢れている。
もっと心安らぐ素敵な音に、日々触れることができれば少しでも豊かな生活になるのではないか、そのきっかけとなるための作品である。
この作品はより豊かな音がある生活の象徴として制作したブリコラージュオブジェであり、「そこにある音」がつくる音がどれだけ面白いかに気づかせてくれる。
2025年:第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 メトロ文化財団賞