11年前、ヘリコプリオンの歯の化石に触れる機会があった。2億9千万年という果てしなく長い時が凝縮されたその化石を手にとった私は、その日から自然の持つ壮大なエネルギーや時間の流れに思いを馳せるようになり、純粋に自然を追い求めるようになった。
その経験が原体験となり、3年前私は日本全国を一周した。息を呑む美しい自然や人が遥か昔に作り出した建造物がまた自然に還っていく姿を目の当たりにした。
大自然で岩と一つになりたいと思った。岩の持つ記憶の中に私の存在を記録したかった。きっとヘリコプリオンの化石の経験が今になって私にそうしたいと働きかけたのだろう。しかし、私や私が生きる社会で経験したものごとを様々な美しい岩達はいとも簡単に包み込んで、「君がいた痕跡は、古往今来私が存在してきた歴史の刹那にすぎないのだ」と私に伝えてきた。
この莫大な規模の何かと対峙する時の怖いけれどそれ以上に私を興奮させるこの感動が気持ち良かった。
そして同時に、中今を生きることの美しさを実感した。
2024年:藝大アートフェス 佳作
2025年:第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 デザイン賞