このごろの私にとって、作品をつくるという行為は、心の奥底にある感情と向き合い、自分自身を解放するためにあると感じます。
陶芸で土を捏ねる感触や、絵画で筆を動かす瞬間には、時に忘れてしまいがちな「子どもの頃の純粋な気持ち」を取り戻すような感覚があり、それは社会に流される日常の中で心のバランスを保つための「救い」であり、同時に私にとっての「生きる術」でもありました。
陶芸の柔らかい土は、まるで人の心そのもののように、形を変えながら私の手の動きに応えてくれます。絵画は、心の中に眠る記憶や感情を色や形に変換し、目に見える形として具現化できる媒体です。私はこれまで、自分の内側にある個人的な思いをこうした手法で「作品」として具現化してきました。その行為は、自分自身の気持ちを形にするだけでなく、私が「私自身」でいるために欠かせない営みだったと思うのです。
2025年:第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 メトロ文化財団賞