老朽化により解体されようとする、人の記憶から“忘れられた建築”は、地方都市を中心に全国に存在する。建築を再生することは、人の歴史・記憶・愛着・コミュニティを引き継ぐことであり、感情価値が蓄積して“愛される建築”となる。
本研究は、2031年解体予定である長野市にある複合施設「もんぜんぷら座」を再利用し、施設利用度を向上させつつ用途変更や大胆な意匠転換により、感情価値を向上させる建築再生を試みる計画である。
長野市が盆地であることに着目し、地下を開放し窪ませることで人々を引き込み、地域文化を知る場を創出する。交差点側の駆体を大胆に削り取り、県産材カラマツを利用してインテリアの木質化を図り、屋内壁を隆起させることで渓谷を想起する空間とした。外壁の意匠材は残置し、人々の記憶を継承する。渓谷を巡る中で、人と出会い交流し、未来を語る感情的体験となる。
過去を懐かしみ、未来を語る“感情の旅”をすることで愛着が育つ。
第54回 文化学園大学 造形学部 卒業研究展 学長賞作品
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