“分かる”と“分からない”の間にある私たちひとりひとりの好き、またその連なりを意識すること、私はこれらの蟠りをほどいていくことこそがデザインの面白さ、あるいは面白いデザインの芽だと考えている。全ての人に通ずることはなくとも自分なりの視点で捉えた価値は、デザイナーか否か関係なしに誰もが感じたことがある小さな気づきのようなもの。
本研究ではそれらを「偏愛」とし、古くから身近な存在である青果を題材に選んで、エピソードの収集を行なった。データから、偏愛が生まれるメカニズムの要素を視点/まなざし/ベクトルに細分化、青果に向けられる多様なまなざしを12種に分類した。
最終成果物としては、感性の共有と創作が連鎖する日本の詩歌文化である連歌を参考に、文章とグラフィックを主としたタペストリーとカードを制作した。青果へのまなざしを入り口に、対象を全く異なるものに転換することで小さな違和感を生み、ユーザーに問いを投げかけることを意図している。カードは読み札と取り札の組み合わせを変えることによって、視点の面白さをゲーム感覚で楽しめるようになっている。