[最優秀賞]
仏像の制作者を特定するために用いられる学術的研究手法の1つに、耳の研究があります。耳の形状は複雑であり、作り手の癖(くせ)が表れやすい場所とされています。
込山さんが研究対象とした善寳寺五百羅漢像は、京都仏師・畑次郎右衛門を中心に制作されました。これまで畑の銘のほか、何人かの仏師銘が確認できていますが、多くの羅漢像は誰が制作したのか、どれほどの人数が制作に関わったのか、不明のままです。研究では畑の墨書(サイン)が確認されている6体の耳の特徴を詳細に調査し、そのデータを基に「分類チャート」を作成しました。これにより、まだ調査されていない羅漢像を分類可能としました。このことは基礎研究として大変評価できます。今後、調査対象がふえることで500体もの制作を成し遂げた当時の仏師たちの全貌が見えてくるかもしれません。
彼女は来春から大学院への進学が決定しています。今回の基礎研究をさらに発展させ、飛躍してくれることを大いに期待します。