[最優秀賞]
自身の故郷、長岡市栃尾に中世から伝わる雪対策の構築物「雁木」をテーマに据えた研究である。
厳しい豪雪地の生活環境を支えてきた店前の私的アーケードとも言うべき雁木は、共助=助け合いの精神を象徴する地域独特の生活文化を示す遺構でもある。国の重要文化的景観の評価軸を用いてその意義、価値を再評価し、地元にとっては当たり前にある風景の重要性とその存在意義を明らかにし、今後あるべき方向性を提示した。
総延長4.3kmに渡る雁木の実態を全区間に渡って観察、実測調査を通じて丁寧な作図と、解像度の高いデータベース化を実現し、その全貌を可視化することに徹した。さらには丁寧なアンケートとヒアリング調査を通じて、その成り立ちから維持管理の苦労、愛着まで、町の人々の思いを徹底して追跡した努力は高く評価できる。また、吸収合併により肥大化した都市の中で遅れがちな地域資産の評価や保全対策に対して一石を投じた功績は極めて大きい。