[最優秀賞]
柏倉琉生の写真は「真実」を創り出している。「事実」はただひとつ。アクリル板をありきたりな風景の中に置いているだけ。鑑賞する人の数だけ感じる「真実」を創り出しているのだ。長時間露光というアナログな写真技術を使って、観る人に錯覚や思い込みを巧みに誘導する、一見静かな写真だが、1枚1枚から問いかけられる不思議な感覚になる写真なのだ。
おいおい試されてるのか私は?とつい呟いてしまう。
タイトルにそれは表れている。「疑念」とはなんと直接的な表題であろうか。タイトルからして鑑賞者に勝負を挑んでいる。その裏にはコロナ禍でアクリルという素材が日常に溢れ、閉塞感の象徴としてのアクリルをあえて未来に対しての「希望の扉」に見立て、鑑賞者に「真実」を問いかけている。
4月から実験的アプローチを模索し、愚直なまでのアナログな写真技法にこだわり、プロトタイプを6月に山形市内で展示した。鑑賞者に「疑念」は生まれるのか?を検証するためである。卒業制作期間トライ&エラーを繰り返し、完成したこれらの7作品。卒業制作最優秀賞にふさわしい教授陣満場一致の大作である。