今日、木製家具は製造工程で組まれた完成品を購入するのが当たり前になっているが、それがどんな特長を持った素材で、どのように作られているか理解して選択し、購入することは少ない。また、無垢材は変形するため、専門の技術や知識がないエンドユーザーにとっては取り扱いのハードルが高い。上記を踏まえ、無垢材の特長を活かした木製スツールを気軽に制作できるDIYキットを提案する。
手を動かして作る体験価値は「座編み」の工程を購入者に行わせることによって提供し、高い技術が必要な組み立ては容易な設計にする。スツールの仕上がりと、手作業の量のバランスをとることで、素材に触れ、手を動かす体験の提供と、本格的な無垢材スツールの完成を両立させることを狙った。初心者でも簡単に、強度のある組み立てを可能にするための構造として、雇いほぞを応用したほぞ組みを取り入れた。脚のほぞと幕板のほぞに穴をあけ、幕板の穴の位置を0.5mm内側にオフセットする。ほぞを組んだ後に、穴にピンを入れて材同士が引き合うことで、クランプ無しで圧定を実現する。また、向かい合う部材を組んだ状態でユーザーに届けることで、作業負荷の軽減を図った。