本研究の目的は、視覚情報と嗅覚情報との心理的距離を把握し、印象操作の方法を明らかにすることである。
まず香りの違いが視覚刺激に及ぼす影響を明らかにするため、「木」「土」「空」を要素とする森の映像を被験者16名に見せながら、ヒノキとラベンダーの2種類の香りを呈示した。その結果、ハーブやみかんという映像要素にないものが連想される可能性を得られた。
次に森と街の映像に対して、概念的に適するから適さないまでの香りを22名の被験者によって選択させた。その結果、森の映像に対する香りは評価順に「ヒノキ、オレンジ、ローズ、コーヒー」、街の映像には「コーヒー、ローズ、オレンジ、ヒノキ」が選ばれた。そこで先にあげた映像と香りの組み合わせを被験者20名に体験させ、心理的距離を評価させた。その結果、香り本来の印象は「好き嫌い」「心地よさ」に影響し、「適合度」「臨場感」「違和感」は映像の印象に影響を与えることがわかった。